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所持金2万円!家を売り払って完成させた執念の映画とは

2010年3月20日 15:25

資金繰りを乗り越え映画を完成させたヤン・イクチュン監督

第10回東京フィルメックスで史上初のダブルで(最優秀作品賞&観客賞を)受賞し、国際映画祭、映画賞で25以上もの賞に輝くなど、世界中の観客・批評家の熱狂を呼んでいる『息もできない』(3月20日公開)。本作を製作したヤン・イクチュン監督は、完成に至るまでの道のりは苦難の連続であったと語る。

監督は、友人・両親に借金してクランクインしたものの、程なく資金が底をつき、撮影の3分の2が終わる頃には、たった30万ウォン(約2万2千円)のお金がなかったばかりに次のシーンが撮れず、スタッフを帰宅させたことさえあったという。

だが、監督の頭に「諦め」という言葉はなかった。さらに、友人からお金を借り集め、家を売り払いまでする。まさに執念。そこまでして彼が描きたかったもの。それは韓国がたどってきた歴史の哀しみ。“国”が自分たちの父親や母親の世代の心に傷を負わせたことへの決着(おとしまえ)だ。

物語そのものはよくある話ではあるのだ。ふたりの男女が反駁(はんばく)し合いながらも、いつしかお互いの中に自分と相通じるものを見出していく……いわば青春映画の定番。だが、監督はふたりの出会いの瞬間から、早くも映画をスリリングにうねらせる。

見るからにヤクザ風情の主人公・サンフンが通りを歩きながらツバを吐くと、偶然そこに通りかかった女子高生ヨニの胸元にかかってしまう。ヨニはツバで制服を汚されながらも、泣きだすどころか強気に立ち向かっていく。威圧的態度や暴力に絶対に屈しない、この目力の強い女子高生の過去に一体何があったというのか? 映画はやがてふたりの荒んだ家庭へとカメラを進めてゆく。

母と妹に暴力をふるい続け、死に至らしめた父をもつサンフンと、ベトナム戦争から帰還し、精神的な後遺症で仕事もできなくなった父をもつヨニ。このふたりが出会い、まさに息もできない緊張の中、映画ならではの官能のシーンは訪れるのだが、それは見てのお楽しみ。とんでもない映画に出合ってしまったと、発見の喜びに心が打ち震えること間違いない。【映画案内人/永島浩】

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