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M・スコセッシ監督も驚愕!?“時をかける”クラシック映画を未来に残すためには?

2017年10月29日 21:18

映画の未来を語るシンポジウムが、今年も開催
映画の未来を語るシンポジウムが、今年も開催

今年で14回目を数える文化庁映画週間。その締めくくりを飾るシンポジウム“―MOVIE CAMPUS―『時をかける僕らのクラシックス』”が、10月29日に千代田区・神楽座で開催。株式会社KADOKAWA代表取締役専務の井上伸一郎がモデレーターを務め、東京国立近代美術館フィルムセンター参事の岡島尚志、原田眞人監督、撮影監督の宮島正弘が登壇した。

毎年開催されているシンポジウムでは、映画文化の最新動向にフォーカスを当てたテーマを設定しており、今年のテーマは「クラシックスの新たな魅力」。近年、小津安二郎監督『浮草』(59)や、溝口健二監督『近松物語』(54)などが4Kデジタルで復元され、ヴェネチア国際映画祭、カンヌ国際映画祭などで上映、各国で魅力が再発見されている。本イベントでは、映画の現場をよく知る3人と井上の間で“文化としての映画”を未来に残すための取り組みについて議論が行われた。

自身も映画プロデューサーとして活躍する井上は「KADOKAWAが継承した旧大映作品の保存状態は比較的よいが、まだ誰も観ていないフィルムが大量にある」と明かし、1979年より長きにわたってフィルムセンターの保存、研究事業に携わってきた岡島に、映画修復の基礎知識を尋ねた。

「現在のようなデジタル修復は、ディズニーが1993年に、コダックの合成システム“シネオン”で『白雪姫』(37)を修復したのが始まりです。フィルムセンターの取り組みは、2002年に9.5mmフィルムで発見された(日本初の長編劇映画である)伊藤大輔監督の『斬人斬馬剣』(29)の修復が発端です。アカデミー・フィルム・アーカイブと協力して手掛けた『羅生門(デジタル完全版)』(08)では、全米映画批評家協会から映画遺産賞を受賞しました」。

ここで、場内ではヴェネチア国際記録映画祭で特別奨励賞を受賞した、大藤信郎監督の色セロファンアニメ『幽霊船』(56)をフィルムセンターが修復した際のデモンストレーション映像を、岡島の解説付きで上映。見事に傷やノイズが除去されていく様子に、場内では驚嘆の声が漏れていた。

続いて登壇した宮島は、伝説の撮影監督である宮川一夫の助手を長年務めた経験を活かし、前述の『浮草』や『近松物語』の修復を監修している。修復過程では、海外のスタッフとの作業も多いが「私は英語が出来ませんが、技術屋の感覚は世界共通で、私が指摘している部分の意図を的確に読んで実現してくれます」と映画に携わるもの同士、以心伝心があると語った。

また『近松物語』の修復作業を主導したマーティン・スコセッシ監督が、完成したフィルムをニューヨークで鑑賞した際のエピソードとして「1カット目の街並みが移った瞬間に“おお、これ新作じゃないか。63年前のフィルムとは思えへんぞ!”と言ったんです」と明かし、場内の笑いを誘った。

また「作業を進めるうち、宮川が失敗している個所もわかるようになってしまった。30年以上組んだ師匠ですし、私もカメラマンです。彼の意図がわかるので、何%かだけ良くしています。研究者の方は怒るかもしれませんが…」と、修復に対しての自説を述べた。

イベント前日に行われ、宮島も出席した京都ヒストリカ国際映画祭での『近松物語』の上映は大盛況だったそうで「(ヒロインを務めた)香川京子さんもお客さん方も、とても喜んでくださって。僕らがやっている事は大したことじゃないけど、未来の人に対して良いことをやっているんだなと思いました」と目を細めた。

原田は、自身の映画作りについて「自分が影響を受けた作品や監督を引き継いで、次の世代に渡したいという強い思いがあります」と語り、例として『関ヶ原』はモノクロ時代の黒澤映画に、『わが母の記』(12)は『浮草』にインスパイアされていると告白。

自身の作品で修復してみたいものとして『KAMIKAZE TAXI』(95)を挙げ「海外の映画祭に出品した際に、短くしてほしいと要請されたので、急遽上映前にハサミを入れて1本しかないフィルムを切ってしまった。その時切った20分を復元したいですね」と希望した。

井上がクラシック映画の魅力に関して尋ねると「何度も観ることで、自分の成長のプロセスをはかれるという側面もある。黒澤監督の中でも、若い頃は魅力的と思えなかった『生きものの記録』(55)が好きになっていたりします」と語った。

最後に、3人が各々の立場から、クラシック映画の保存への想いを語った。

「今年、大林監督の『時をかける少女』(83)の再タイミング版という、当時の色を再現するバージョンを制作しましたが、70~80年代の邦画のルックや、その当時の日本人の、黄色人種ならではの肌の色を、当時携わったスタッフの方がきちっと再現している。こういう元々の映画を変えない努力をする事で、クラシックの本当の価値を未来に繋げていきたい」(岡島)

「フィルムを扱える人がいなくなってきているが、その技術は残していかなければならないと思う。各国の文化庁などが、大学の映画教育の上ではフィルムから始めるなどという指導をしていく事が必要だと思う。東京国際映画祭には懐古上映がないので、今日のような古い映画を語れる機会がもっと多いといいなと思います」(原田)

「以前試写の際、スコセッシ監督から『他に修復したい作品はあるか?』と尋ねられて『無法松の一生』(43)を修復したいと言いました。今は映画が手軽に観られるので、新しいものを作る若い人たちには、古い映画を観て、良い所だけ真似してほしいですね」(宮島)【取材・文/Movie Walker】

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