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『オトナ帝国』と『戦国大合戦』が傑作過ぎて大変だった!?中島かずきが原恵一監督に激白

2017年10月27日 11:47

10月25日より開催中の第30回東京国際映画祭。そのアニメーション特集「映画監督 原 恵一の世界」が26日よりスタートした。1日目は原監督が2002年に手掛けた『映画クレヨンしんちゃん 嵐をよぶ アッパレ!戦国大合戦』を上映。トークショーでは劇作家・脚本家の中島かずきを迎えて、監督の時代考証へのこだわり、制作にまつわる裏話が繰り広げられた。

左から中島かずき、原恵一監督、MCを務めたアニメ評論家・氷川竜介
左から中島かずき、原恵一監督、MCを務めたアニメ評論家・氷川竜介

“合戦前の緻密な描写”に驚愕

もともと「クレヨンしんちゃん」原作の発行元・双葉社の編集者だった中島。「『映画クレヨンしんちゃん 嵐をよぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』(01)を見て“こんな傑作ができたのか!”と度肝を抜かれ、対談を申し出た」のが監督との出会い。原は「申し訳ないけど、当時は存じ上げてなくて。同じころ『オトナ帝国』を褒めてくれた樋口真嗣と3人で会ったりしました」と補足する。

その後、中島は『オトナ帝国』までのシリーズ10作品を紹介した「クレヨンしんちゃん映画大全」を編集。『戦国大合戦』の完成前に出版され、中島は「もう少し待つべきだった』と残念そうに語る。というのも「(本作が)実写の時代劇なら省くようなシーンまで描いていたのが衝撃的だった」そうで、監督の丁寧な時代考証を絶賛。「合戦前の段取りの“刈り働き”(敵の領地の作物を刈り取り、兵糧を減らす行為)まで描いた映画を見たのは初めて」と明かす。

【写真を見る】『映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦』より。背後の山城にも時代考証のこだわりが!
【写真を見る】『映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦』より。背後の山城にも時代考証のこだわりが! [c]臼井儀人/双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK 2002

そうした描写は「アニメだからこそできた」と監督。「当時の合戦は雑兵が礫(小石)や長柄(5~6m長の槍)で戦っていたんです。それを実写で撮ったら絶対けが人が出るし、長柄はきっと役者が扱えない」と説明。また「関東地方は石垣に適した石が取れなかったので、石垣を使わず守りを固める山城をリアルに描いた」と付け加え、考証に裏打ちされたこだわりで観客を驚かせていた。

『戦国大合戦』はシリーズの超難易度映画?

そんな『戦国大合戦』誕生の背景には、シリーズにおける監督の苦闘があった。「1~4作目の監督が本郷みつるさんで、僕は5作目から監督して、自分なりに毎回違う方向性で挑戦していたんです。でも興行成績が毎年落ちて“お前が好きなことばかりやってるからだ”と、いつも怒られてました(笑)。それで“これが最後だ”と思って子供向けに大サービスして作った『映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶジャングル』(00)で成績が上がったら“来年もやって”と言われて(笑)」

原監督は、黒澤明監督の『七人の侍』や司馬遼太郎の歴史小説の話題を交えて『戦国大合戦』を解説
原監督は、黒澤明監督の『七人の侍』や司馬遼太郎の歴史小説の話題を交えて『戦国大合戦』を解説

さらに翌年の『オトナ帝国』大ヒットを挟み『戦国大合戦』に至る。中島は「『戦国大合戦』は(監督が絵コンテを務めた)3作目の『クレヨンしんちゃん 雲黒斎の野望』(95)で原さんがやりたかったことを全部盛り込んだ作品では?」と質問すると、監督は「その通りです」と即答。「『雲黒斎の野望』の時は、時代劇のことは詳しく知らず、自分なりに戦国時代の資料を読み漁ったら面白くなってきて、ものすごくのめり込んだんです。それで制作が終わった時“いつか戦国ものをやりたいな”って思ったんです。『戦国大合戦』は、『オトナ帝国』の興行成績が良かったので、来年は口出しされずできると思って“時代劇”“恋愛”“主要人物の死”というハードルの高い要素ばかり思いついて、みんなが絶対“そっちへ行くな”と止める方向へ舵をきった」のだという。

“作家・原恵一”誕生を感じた瞬間

中島は「原さんは『クレヨンしんちゃん 爆発!温泉わくわく大決戦』(99)や『嵐を呼ぶジャングル』で『しんちゃん』映画の枠をどんどん逸脱して『オトナ帝国』で極められた。シリーズの枠組みギリギリのところを抉ってきていた」と分析。「『オトナ帝国』の次を作るのはもうキツイのでは?と思っていたら、『戦国大合戦』は全く別のベクトルで傑作だったのでびっくりしたし、原恵一という作家の誕生を感じた」と当時の衝撃を解説する。

「さすがに舞台じゃ礫や槍は使えないです」と自身のフィールドも引き合いに笑わせる中島
「さすがに舞台じゃ礫や槍は使えないです」と自身のフィールドも引き合いに笑わせる中島

原は「最後のつもりで臨んで、その後は『河童のクゥと夏休み』(07)を作って…」と、同作でシリーズの監督を離脱。その後、中島は『クレヨンしんちゃん ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん』(14)で脚本を手掛けるが「『ロボとーちゃん』以前はプロデューサーとして参加していました。けど、あの2本が突出し過ぎて原さんがいなくなった後“どうする?”って大変だったんですよ(笑)」と激白。「『しんちゃん』映画は感動させなきゃという“『オトナ帝国』症候群”が残って。でも『映画クレヨンしんちゃん ちょー嵐を呼ぶ 金矛の勇者』(08)あたりで『しんちゃん』は子供を笑わせる作品じゃなきゃ!と感動路線からいったん離れて…。ずっと悪戦苦闘したんですよ」と監督や会場を笑わせた。

「『オトナ帝国』症候群は、『ルパン三世』といえば(宮崎駿監督の)『カリオストロの城』と捉えられる感じ」と氷川が例え、中島が同調。奇しくも2作品とも双葉社が発行元
「『オトナ帝国』症候群は、『ルパン三世』といえば(宮崎駿監督の)『カリオストロの城』と捉えられる感じ」と氷川が例え、中島が同調。奇しくも2作品とも双葉社が発行元

最後は「他の『しんちゃん』映画もぜひ見てもらいたいです(原)」「『ロボとーちゃん』もぜひ(中島)」と観客へのメッセージで締めくくった。「映画監督 原恵一の世界」は11月2日(木)まで開催。【取材・文/トライワークス】

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