007シリーズを再起動させた立役者!ダニエル・クレイグが作り上げた人間臭い6代目ボンド |最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
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コラム 2020/11/16 11:00

007シリーズを再起動させた立役者!ダニエル・クレイグが作り上げた人間臭い6代目ボンド

21世紀になって初めてのジェームズ・ボンド俳優交代劇は、2005年の発表時からバッシングの嵐が吹き荒れた。先代のピアース・ブロスナンに替わって6代目ボンドに就任したイギリス人俳優、ダニエル・クレイグはこのときすでに名の知れた存在だったが、クレイグの風貌は従来のボンドのイメージとはかけ離れたブロンドの短髪であり、「スペクターの殺し屋役のほうが似合うのでは?」などのネガティブな反応が飛び交い、一部の熱狂的なファンは新作へのボイコット運動を起こした。

抜擢された当時は“金髪ボンド”として話題に
抜擢された当時は“金髪ボンド”として話題に写真:SPLASH/アフロ

ところがフタを開けてみれば、クレイグ版ボンドのデビュー作『007/カジノ・ロワイヤル』(06)は、シリーズの歴代世界興収を更新する大ヒットを記録。シリーズの伝統を重んじるうるさ型のファンや辛口の批評家をもうならせ、新しいファンの獲得に成功した。

1作目となった『007 カジノ・ロワイヤル』のメイキング
1作目となった『007 カジノ・ロワイヤル』のメイキング写真:SPLASH/アフロ

そもそも『カジノ・ロワイヤル』は通算で数える“シリーズ第21作”よりも、“再起動シリーズの第1作”と呼ぶのがふさわしい。この物語は原作者イアン・フレミングの小説シリーズの1作目であり、殺しのライセンス“00(ダブルオー)”を獲得したボンドの最初の任務を描いたもの。世界中のテロリストの資金を運用する怪人ル・シッフル(マッツ・ミケルセン)の陰謀を打ち砕くため、モンテネグロのカジノ・ロワイヤルに乗り込んでいくボンドの姿を映し出す。

このシリーズ再起動にあたり、ボンドはスパイとしての潜在能力は抜群だが経験が浅く、情緒不安定なキャラクターに設定された。P・ブロスナンの初登場作『007/ゴールデン・アイ』(95)を手掛けたマーティン・キャンベル監督による作風も徹底的にシリアス調で、奇想天外なガジェットは一切出てこない。ボンドの苦闘ぶりも凄まじく、敵との激闘で傷を負って血まみれになるのは序の口。ル・シッフルに毒を盛られて心肺の一時停止に陥ったり、全裸で拘束されたまま拷問され、女性にはわからない股間の激痛にのたうち回ったりする。これほどやることなすこと危なっかしいボンドは、それまで誰も見たことがなかった。

ジェームズ・ボンド役としてダニエル・クレイグが演じた初の作品『007 カジノ・ロワイヤル』
ジェームズ・ボンド役としてダニエル・クレイグが演じた初の作品『007 カジノ・ロワイヤル』写真:SPLASH/アフロ

続く『007/慰めの報酬』(08)は本作のラストシーンから始まるが、そのようにドラマの連続性が打ち出されている点もクレイグ版ボンドの大きな特徴のひとつ。ボンドをファンタジックなスーパーヒーローではなく、複雑な内面を持つ“人間”と定義し直し、その痛々しい葛藤と成長を描くという試みは、それ以前にはまったくなかった発想だ。『カジノ・ロワイヤル』では、モンテネグロでの任務を共にする美しきイギリス財務省職員ヴェスパー・リンド(エヴァ・グリーン)との壮絶な悲恋のエピソードも、クレイグのクールな風貌からは想像もつかないほど人間臭い激情型ボンドのイメージを決定づけた。

シリーズ史上最大の革新というべき再起動の立役者となったクレイグは、2012年のロンドン・オリンピック開会式でエリザベス女王をエスコートするミッションを華麗にこなし、『007/スカイフォール』(12)、『007/スペクター』(15)では風格さえ漂わせた。最新作『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』(20)は、コロナ禍による相次ぐ公開延期でファンをヤキモキさせているが、おそらくこれが見納めとなるであろうクレイグ版ボンドの雄姿を世界中が待ちわびている。

【写真を見る】マドレーヌ・スワン役として続投しているレア・セドゥとダニエル・クレイグの美しき2ショット
【写真を見る】マドレーヌ・スワン役として続投しているレア・セドゥとダニエル・クレイグの美しき2ショット写真:SPLASH/アフロ

文/高橋諭治

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