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コラム 2020/11/19 19:30

いいじゃないか、無様で…人気エッセイの著者が『アンダードッグ』で“悔しみ”を力に変え闘う男たちに共鳴!

無様な“正攻法”がすべてをなぎ倒す最強のストレートに!

なにもない俺たちに、格好の良い会心の一撃なんて打てない。自分のために拳を振るう覚悟を決め、晃が無様な“正攻法”に出る展開は、同じ負け犬の私だからこそ、正面からぶっ刺さった。だって、あんなに長々と理不尽で出口のない社会の闇を見せつけておきながら、正しすぎてぐうの音も出ないほど真っ直ぐなメッセージを放ってくるなんて思いもよらないじゃないか!

『百円の恋』に続き本作でもボクシングを描いた武監督
『百円の恋』に続き本作でもボクシングを描いた武監督[c]2020「アンダードッグ」製作委員会

『百円の恋』というボクシング映画の傑作を放っておきながら、こうしてもう一度観客に人生を生き返させるようなメッセージで作られたボクシング映画を撮る、武正晴監督と脚本家、足立紳の映画づくりにかける信念の強烈さには“悔しみ”さえ覚える。既に得たタイトルに自ら挑戦者として名乗りでる必要があるか?過去の自分が障害になるのなら、避けて通るのが人というものだ。自分が比べなくても他人が比べるだろうし。

しかし、そのような躊躇を微塵も感じさせない勢いで進む物語。一体どういうやり方で来るんだ?と腕組みして観始めた私の存在は思いっきり無視された。チクショー…はじめから向かう先が見えているようだ。新しい画を求めるというより、撮るべきものを彫りだすように制作されたのではないかと想像する。そんなふうに信じ切って進めるなんて、幸せじゃないか。私はいつもビビってばかりだ。

根性が不敗のチャンピオンさえ打ち負かすことも
根性が不敗のチャンピオンさえ打ち負かすことも[c]2020「アンダードッグ」製作委員会

この物語が乗せられるのがまたボクシングだったというのも、必然のことなのかもしれない。1対1、顔を腫らして拳で殴り合うとは、なんて野蛮で馬鹿馬鹿しいスポーツだ。数あるスポーツのなかで、わざわざボクシングを選ぶ奴の気が知れない。しかし、360度観客に囲まれた誤魔化しのきかないリング上に立つ覚悟と勇気、身一つで拳を振るい闘う姿にはどうしてか釘付けになり、本能的な興奮がわき上がる。

そしてなによりも、劣勢の選手が何度も、何度も立ち上がるうちに観客を味方につけ、「立て!!」「負けるな!!!」と怒号のような力強い激励の渦を巻き起こすボクシングならではの現象。

時としてリングの上では、ただの根性が不敗のチャンピオンさえ打ち負かす。

残念ながら、真剣で正しい奴には誰もかなわない。どれだけ知識や経験を持ちだして、「世の中そんなに甘くないよ」とくさしたり茶化したりしようとしても、教科書で習うような基礎基本を真剣に繰りだし勝利を掴もうとしてくる奴の前では一切意味がない。たとえそいつが殴り倒され、リングに伏したとしても、“敗北者”にはならないのだ。本当に残念だ。

大人になるために散々馬鹿にしてきたド正論が、すべてをなぎ倒す最強のストレートに生まれ変わる。この映画にこれほど相応しい舞台もあるまいよ。

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