オトナも泣ける「クレヨンしんちゃん」の作り方!京極尚彦監督、久野遥子が明かす『ラクガキングダム』に込めた想い - 3ページ目 |最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
MENU

インタビュー 2020/9/18 23:00

オトナも泣ける「クレヨンしんちゃん」の作り方!京極尚彦監督、久野遥子が明かす『ラクガキングダム』に込めた想い

「日常とファンタジーが地続きにあるというのは、子どもにとっての“現実”に近いなと思います」(久野)

『映画クレヨンしんちゃん アクション仮面VSハイグレ魔王』
『映画クレヨンしんちゃん アクション仮面VSハイグレ魔王』TELASA(テラサ)、ABEMA、Amazon Prime Videoにて一挙配信中[c]臼井儀人/双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK1993

――本作はビジュアル、物語の両面で自由な世界観が特徴的ですが、過去の「映画クレヨンしんちゃん」は意識されたのでしょうか。

京極「久野さんと同じように、自分が見ていた『しんちゃん』も『映画クレヨンしんちゃん アクション仮面VSハイグレ魔王』など初期の作品だったので、自ずと世界観は近づいていきましたね。映画のセオリーとしては、描きたいメインキャラクターに絞ってある程度スリムにする事が由とありますが、本作は自由なラクガキたちがテーマでもありますので、視覚的にも楽しいキャラクターを敢えて増やして映画を豊かにしました。お客さんからしたら『あのホットドックなんだったんだろうね』と帰り道に話すのも楽しいのかなとも思ったりしましたし、そうしたおもちゃ箱のような世界観も『ラクガキングダム』の特徴になっていると思います」

CAPTION
[c]臼井儀人/双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK 2020

――お2人にとって、ファンタジー観の原点になっている作品はどういったものでしょうか。

京極「本作の場合は、人々の夢を結晶にしている“ファンタージエン”を舞台にした『ネバーエンディング・ストーリー』なども参考にしました。子どもの時に観た映画ですと、『ロビンフッド』や『バック・トゥ・ザ・フューチャー』などはロマンがあって、映画的な嘘のつき方という意味でも凄くいいなと思います。いまは時代が進んでなんでもCGで作れてしまいますが、昔の映画の夢のある感じも好きですね」

『映画クレヨンしんちゃん ヘンダーランドの大冒険』
『映画クレヨンしんちゃん ヘンダーランドの大冒険』TELASA(テラサ)、ABEMA、Amazon Prime Videoにて一挙配信中[c]臼井儀人/双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK1996

久野「『ラクガキングダム』ともつながる作品ですが、『映画クレヨンしんちゃん ヘンダーランドの大冒険』が自分のなかで、映画的なマジックというのを初めて知った作品ですね。初めて観たのはしんちゃんと同い年だったので、まるでVRみたいに感じていました。もちろんファンタジー要素はあるんですが、あくまで日常と地続きな夫婦喧嘩や、イタズラな子どもがファンタジーと同列にあるというのは、子どもにとっての現実に近いなと思います。大人になって自分が制作に参加してみると、みさえやひろしのような大人たちをファンタジーの世界に当然のように参加させるというのは凄く難しいことをやっているんだなと実感しました。『クレヨンしんちゃん』のフィクションラインというのは自分自身の世界観のベースにありますね」

「賛否の声が上がるのは作品が生きているということ。いろんな意見があってほしいです」(京極)

――子どもたちにこの映画を通して、伝えたいものや感じてほしいものはなんでしょうか。

京極「王道の冒険活劇やいろんなキャラクターを楽しんでほしいというのがベースにありますが、それだけではなく、『ちょっと怖かった』とか『気持ち悪かったけど、綺麗だったな』という感触も映画のおもしろいところかなと思っています。子どもの時に映画館で観た体験って、違う世界に行って帰ってきた感覚になれるものだと思うので、そうした体験をしてもらえたらうれしいですね。そして、レキシさんが歌っている主題歌『ギガアイシテル』の歌詞にもあるように、観終わった後に自分もなにかしてみようとか、新しいことにトライしてみようという気持ちになってほしいです」

久野「テレビシリーズの映画版だからこそ、お子さんには『これって普段テレビで見ているものと少し違うな、不思議だな』と心のなかに引っかかりを持ってもらいたいですね。将来その引っかかりが感性の広がりになっていくと思うので、異物は異物として残したいと絵を描く時は思っていました。お子さんにとって初めての“映画体験”になってくれたらうれしいです」

京極「“大人”になってしまった、かつての子どもたちに対しても同じことが言えるかもしれないですね。ちょうど親の世代は僕と同い歳くらいだと思いますが、自分が親世代だと思うと『全然大人じゃないな』と感じているので、映画を通して、子どもの頃に感じていたような感情を喚起出来たらいいなと思います」

CAPTION
[c]臼井儀人/双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK 2020

――子どもには子どもの視点、大人には大人の視点があって、非常に間口の広い作品だと感じました。

京極「ラクガキというのびのびとした気持ち、その力を体験してもらいたいというのが本作を制作するうえで1番大きなエネルギーになっていました。まさか現在のような状況になるとは思っていませんでしたが、絵を描くこと以外にも、楽しむ気持ち、ワクワクすることの大切さをコロナ禍で痛感しました。家にいてテレビを観て、寝て起きて…という生活は平穏ではありましたが昂ることはなかったんです。ワクワクするというのは年齢に関係ない気持ちだと思うので、たくさんの人に観ていただきたいです。また、賛否の声が上がるというのも作品が生きているということだと考えているので、いろんな意見があってほしいですね」

久野「以前、(本作の脚本を手掛けた)高田亮さんが書かれた実写映画やテレビドラマを見た時、たくさんの登場人物が出てくるのにそれぞれにドラマがしっかりある、とてもおもしろい脚本を書く方だなと思いました。京極さんと高田さんが組まれると聞いて、ゴージャスな映画になるだろうなと予想していたのですが、完成した映画を拝見したら本当にゴージャスで、観たことのない『クレヨンしんちゃん』に仕上がっていました。この驚きは、私にとってひとつの事件でした。是非シルバーウィークやお休みの際にご覧ください」

「宝石の国」京極尚彦監督、久野遥子が再タッグ!『ラクガキングダム』に込められた想いとは?
「宝石の国」京極尚彦監督、久野遥子が再タッグ!『ラクガキングダム』に込められた想いとは?[c]臼井儀人/双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK 2020

取材・文/編集部