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尾道・大林宣彦を訪ねる旅――『転校生』から『海辺の映画館』へ、“映画のまち”と大林映画の40年

2020年8月9日 23:00

なぜ、尾道で映画を撮り続けるのか

高台に向けて入り組んだ尾道の街並み
高台に向けて入り組んだ尾道の街並み

「さあ乗ってください、どこなりとご案内しますよ」。
普段、監督を送迎するのにも使っているというハイエースに我々が乗り込むと、車内後部には映画撮影用の機材が多数積まれていた。
「狭くて申し訳ないです。映画の制作が決まると、シナリオを書く前から、監督を乗せて尾道中をいろいろと見て回るんです」。
大林監督の病状もあり、以前に比べて映画制作の機会は激減したが、大谷さんは「この機材車を崩す気はないです」という。
「監督が『撮りたい!』と思われた時、いざとなれば地元の仲間たちを集めて、僕がRED(映画撮影に使用するデジタル・ビデオカメラ)を引っ張りだして担げば、映画は撮れますからね」と口角を上げる。
「出発しましょう。お見せしたい場所がたくさんあるんですよ」。大谷さんはサングラスをかけて、車のギアを入れた。

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取材当日は幸いにも晴天に恵まれ、尾道市内を車で走るだけで、大林映画のなかに迷い込んだような錯覚を受ける。
「監督が、単に自分の故郷であるという理由だけで尾道にこだわっているのだとしたら、40年にわたって17本もの作品を撮影しているというのは異常だと思います。じゃあなんでそんなに撮るのか?と言えば、『なるほどね』と思うようなシーンが生まれるからじゃないでしょうか」。

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勾配に合わせて配置された階段と網目のような街並み、多数の寺院、瀬戸内海の美しい海を擁する尾道市は古くより、小津安二郎監督の『東京物語』(53)などの名作が撮影された“映画のまち”でもあった。『東京物語』撮影当時15歳だった大林少年は小津監督の撮影現場に立ち会い、強い感動を覚えたのだという。
「自分が育った土地が、たまたまこんなにすばらしいところだった、だから映画にするんだと考えて、監督は『転校生』の時、奥様でプロデューサーの恭子さんや美術監督の薩谷和夫さん、撮影監督の阪本善尚さんを自分の故郷にいざなったんじゃないでしょうか。そうやって映画を作っていくうちに、監督も含めたみんなが『なんてすばらしいところだ』と尾道に夢中になっていったんです」。

右手は『ふたり』『あした』にも登場した、料亭旅館魚信
右手は『ふたり』『あした』にも登場した、料亭旅館魚信

写真/黒羽 政士



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