パク・ジフ
ウニ
第69回ベルリン国際映画祭ジェネレーション14plus部門グランプリを獲得した人間ドラマ。14歳のウニは学校に馴染めずにいるが、両親には子供たちの心と向き合う余裕がない。孤独な思いを抱える彼女の前に、初めて自分の人生を気にかけてくれる大人が現れ……。キム・ボラ監督は初長編作品である本作に自身の少女時代の体験を投影させ、1990年代のソウルを舞台に思春期の少女の揺れる思いと家族との関わりを描いた。
※結末の記載を含むものもあります。
1994年、空前の経済成長を遂げる韓国のソウル。両親、姉、兄と共に集合団地に暮らす14歳のウニは、学校に馴染めず、違う学校に通う親友と遊んだり、男子学生や後輩の女子とデートをしたりして過ごしていた。小さな餅屋を切り盛りする両親には子供たちと向き合う余裕はなく、父は長男である兄に期待。しかしその兄は親の目を盗みウニに暴力を振るっていた。そんな中、ウニが通っている漢文塾に、どこか不思議な雰囲気を漂わせる女性教師ヨンジがやってくる。ウニは自分の話に耳を傾けてくれるヨンジに心を開いくように。入院したウニの見舞いに訪れたヨンジは、誰かに殴られたら黙っていてはいけないと静かに励ました。ある朝、ソンス大橋が崩落。いつも姉が乗るバスが橋を通過する時間帯での出来事だった。まもなく、ヨンジから一通の手紙と小包がウニの元に届き……。
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中学生の少女の気持ちを描いた、青春映画。
子ども故の「痛み」と「成長」を感じられる、繊細な表現が染みる。
淡々としたシーンの連続なので、意味合いを考えながらならいいのですが、多くの人には少々眠気を誘発する危険性があり。
1994年、急激な経済発展に沸くのに反して、超学歴社会がいびつな価値観を作り、男尊女卑が残る韓国。
日本でも昭和50年代に覚えのある、カオスな時代の空気。
横暴な父親の言葉の暴力、兄の暴力、親友の裏切り。
理不尽なことばかりに押しつぶされそうになりながら、少しずつ強さを得ていく主人公を愛しく感じました。
また、女性が理不尽と戦う心について言及し、フェミニズム視点でのあの時代を捉えているのも興味深かった。
その数年後に、街のあちこちで手抜き工事による建築物崩落や、IMF管理下に置かれる通貨危機と失業率アップという地獄の始まりがあることを知っていると、大学におそらく行けない彼女が、高校卒業後に仕事を得ることが難しくなる世代であることに気づくと、より意味合いが重いことにも想像が及びました。
主人公のような女の子が多かったんだろう、ということもまた、考えさせられます。
2時間18分の上映時間・・・
ただ、息を止めるように、静かに主人公ウニの心の葛藤に共感し、その成長を見守りました。
1990年代、日本とはまた違った形で、劇的に変化しようとしていた韓国社会の中で、ひとりの少女の心の動きを中心に、少女の成長だけでなく「思春期の子供への大人の係わり方」についても考えさせられる内容でもあり、鑑賞後はきっと誰もが色々と考えてしまうはずです。
そして、主人公を演じたパク・ジフの等身大の演技の虜になることでしょう。
キム・ボラ監督・・・長編デビュー作で、これだけの作品を撮るとは、これからが楽しみです!