のん
北條すず(旧姓:浦野)
第2次大戦下の広島・呉を舞台に、大切なものを失いながらも前を向いて生きていく女性すずの日常を描いた、こうの史代の同名漫画をアニメ映画化した人間ドラマ。『マイマイ新子と千年の魔法』で評判を呼んだ片渕須直監督が、徹底した原作追及、資料探求などを重ね、すずの生きた世界をリアルに描く。主人公の声をのんが演じる。
※結末の記載を含むものもあります。
広島市の江波で生まれ、1944年の2月に18歳で呉にお嫁にやってきたすず。海軍勤務の文官・周作の妻となった彼女は、優しい夫の両親や厳しい義姉の径子、個性豊かな隣人たちに見守られながら毎日のくらしを積み重ねていく。だが、日本海軍の一大拠点だった呉は度重なる空襲に遭い、すずが大切にしていたものは失われていく。
北條すず(旧姓:浦野)
黒村径子
北條周作
黒村晴美
北條円太郎
北條サン
水原哲
白木リン
浦野すみ
浦野十郎
浦野キセノ
森田イト
小林の伯父
小林の伯母
知多さん
刈谷さん
堂本さん
[c]こうの史代・双葉社/「この世界の片隅に」製作委員会 [c]キネマ旬報社
いつもぼうっとしているが、絵を描くのが抜群に上手いヒロインすずと、彼女の周りの物語。
広島と呉という、2つの都市。前者はヒロインの故郷。後者は嫁ぎ先。冒頭の昭和初期の人さらいエピソードが、まるで日本むかしばなしのようにメルヘンチックで、しかもそれがヒロインの運命に決定的に関わっている。現実と夢を織り交ぜた前半の描き方が上手い。
後半は、本土への爆撃が激しくなり、呉は大損害、広島はわりと何事もなし。一時はヒロインすずは、実家への「疎開」を勧められるが・・。
コトリンゴの音楽のやわらかさ、のんの声のやわらかさ、そしてこうの史代原作のやわらかさと、全体を通じて、「銃後」の女性たちが戦争をいかに乗り切ったか、何を失い、何を得たか、そしてヒロインの心の成長は・・
何となしに、劇場に続いて、先日テレビで鑑賞。やはり最初から最後まで引き込まれました。描写の細やかさが素晴らしい。とてもクラウドファンディングで作られたとは思えない。
女性ならもっとこの作品に感情移入できるでしょう。
とても哀しいが涙が出るわけでなく、ただ暗い気持ちが続く映画。そして、ルールを守らせることが正義で、ルールを吟味する習慣のない民族国家の日本に、腹がたつ。
そんな中でも、何も考えずに、自己主張をせずに流されて行く生き方に、初めて疑問を感じたすず。日本も目覚めるべきだ。