

ボリショイ・バビロン 華麗なるバレエの舞台裏
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評価・レビュー3.9
世界三大バレエ団の一角をなすボリショイ・バレエ団の舞台裏を世界で初めて撮影したドキュメンタリー。2013年の芸術監督襲撃事件以来、噴出する様々な問題に揺れるなか、夢を追い、厳しい鍛錬の日々に身を捧げるダンサーたちの苦悩と喜びを映し出す。製作総指揮は、「マン・オン・ワイヤー」のサイモン・チン。
ストーリー
※結末の記載を含むものもあります。
2013年1月17日夜、ボリショイ・バレエ団の元プリンシパルで、時として論争の的にもなっていた芸術監督セルゲイ・フィーリンが自宅の外で覆面の男から襲撃され、硫酸を顔面に浴びる事件が起こった。重傷を負ったフィーリンは失明の危機に瀕する。世界的に有名なロシアの劇場が受けた打撃は計り知れないが、ソリストのパーヴェル・ドミトリチェンコが逮捕及び起訴されると、個人間の対立、勢力争い、嫉妬、性行為要求の疑惑、金銭問題などがバレエ団に渦巻いていたことが明るみに出る。市民からの抗議が殺到し、数人の団員が退団または解雇されるなか、ロシア政府は秩序を回復させるため、ウラジーミル・ウーリンを新総裁に任命した。9月19日、ウーリンは回復中のセルゲイ・フィーリンとステージに上がり、新シーズンの主要演目を発表するが、過去に組んだことのある2人はお互いに反目していた。最初の公演から数日たっても、ダンサーたちのキャスティングに対する不満は収まらなかった。スキャンダルによって誇りと団結心を奪われ、混乱状態から解放されたいと願っていたダンサーたちは、リハーサルと公演に追われる厳しい日々のなか、ダンサーという職業の苦悩と喜びを語る。ドミトリー・メドベージェフ首相は、ボリショイ・バレエ団が国民文化に強い影響を及ぼす存在であり、世界にロシアを印象付ける秘密兵器であると認識している。ボリショイ・バレエ団は、独特な政治的シンボルであったが、ウーリンは「ロシア政府を後ろ盾とする人々からの干渉には断固抵抗する」と宣言。一方、フィーリンに対して抱く反感が打ち合わせで表面化する。政治的な陰謀や裏切りが横行するなか、ダンサーたちはあくなき情熱と厳しい鍛錬の日々に身を捧げ、完璧な舞台を見せるという夢を追い続ける。
スタッフ
ニック・リード
監督、撮影
マーク・フランチェッティ
共同監督、プロデューサー
サイモン・チン
エグゼクティブプロデューサー
マキシム・ポズドロフキン
エグゼクティブプロデューサー
スミス&エルムス
音楽
作品データ
- 原題
- BOLSHOI BABYLON
- 映倫区分
- G
- 製作年
- 2015年
- 製作国
- イギリス
- 配給
- 東北新社
- 上映時間
- 87分
[c] 2015 RED VELVET FILMS LTD. ALL RIGHTS RESERVED [c]キネマ旬報社
映画レビュー
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Fujiko
42015/9/24硫酸事件もあり相当泥沼化した内幕が暴かれるかと想像していたが、誰もが率直に語るわけはなく、ほのめかす程度なので真実は不明のままだ。セルゲイ・フィーリンは被害者ではあったが、もしかすると自業自得なのかもしれない。あるいはトップ選手が優れた監督になるとは限らないということの見本なのかもしれない。ドミトリチェンコは如何にも悪人面で撮られていたが、妬みだけで自分の地位を擲ってまで悪質な犯行に及ぶだろうか。ひょっとすると本当の黒幕に嵌められただけかもしれない。しかしこの事件が起こらなかったら劇場の腐敗は続き、ダンサー達が疲弊しただけだろう。ダンサー達も様々で彼らのインタビューからは本音が漏れて、バレエ団の雰囲気が感じられた。誰からも公平に話を聞いたことで、この作品としての意見が偏ることはなく、鑑賞者にゆだねられた形だ。
いわゆる踊り子と言われパトロンが存在したのは過去のことであり、現代のバレエダンサーはれっきとした芸術家である。性的な要求に応えることで役を得る者がいるとしたら残念だ。とはいえ今のロシアはどうだか知らないが、ひと昔前は汚職や賄賂が当たり前だった国で、ボリショイ劇場も御多分に漏れず、その縮図であり続けたということか。ウーリン新総裁が清廉な人物であることを祈り、劇場とバレエ団の改革を進めて、これからも芸術の世界を牽引していってもらいたい。続きを読む閉じる
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