イザベル・ユペール
アンナ
母親が娘のヌードを撮影した1977年発売の写真集『エヴァ』の被写体だったエヴァ・イオネスコが、自らの実体験を映画化。出演は「愛、アムール」のイザベル・ユペール、ルーマニア生まれの新人アナマリア・ヴァルトロメイ、「ホーリー・モーターズ」のドニ・ラヴァン。撮影を「8人の女たち」のジャンヌ・ラポワリー、音楽を「ベルヴィル・トーキョー」のベルトラン・ブルガラが担当する。
※結末の記載を含むものもあります。
写真家を目指すアンナ(イザベル・ユペール)は、多忙のため留守が多く、12歳の娘ヴィオレッタ(アナマリア・ヴァルトロメイ)は曾祖母に育てられてきた。ある日、アンナはヴィオレッタを厚いカーテンに閉ざされ光の入らない自室に招き入れ、ヴィオレッタの三つ編みの髪をほどき、白いレース・ドレスに着替えさせ、写真を撮り始める。母と遊んでいるような感覚が楽しく、ヴィオレッタは母の言われるままにポーズを取る。アンナは、画家エルンスト(ドニ・ラヴァン)のアトリエにヴィオレッタを連れて行く。アンナにニコンのカメラを与え、彼女が写真を撮るきっかけを作ったのはエルンストだった。母とエルンストを退屈そうに眺めていたヴィオレッタは、二人が親密そうにする姿に不快感を募らせ、彼の絵をメチャクチャにしてしまう。そんな中、ヴィオレッタの身を案じる曾祖母の祈りとは裏腹に、母娘のフォトセッションはエスカレートしていく。シースルーやスパンコールのレオタード、黒ストッキング、ガーターベルトという衣装、赤いルージュに濃いアイメイクを施し、葬式用の花輪や十字架、髑髏や壊れた人形などを手にヴィオレッタは妖艶なポーズを作る。さらにアンナはヴィオレッタのドレスを剥ぎ、脚を開かせ、過激なポーズを要求。やがてアンナの個展が開催され、新進アーティストの仲間入りを果たしたアンナの評判はヨーロッパを駆け巡り、写真も高値で売れ始めるのだった。ある時、母娘はシド・ヴィシャスとのフォトセッションのオファーを受けて、ロンドンへ飛ぶ。シドにお姫様のように扱われ、気をよくしたヴィオレッタだったが、翌日撮影が始まると服を脱いでシドとのキスを求める母の指示を拒んで撮影から逃げ出してしまう。この日を境にヴィオレッタはアンナに利用されていることへの不満を爆発させるようになるが、程なくしてヴィオレッタを守り続けてきた曾祖母が死去。アンナの写真が男性誌のカヴァーを飾り、学校でもヌードモデルと囃されていじめられるヴィオレッタは孤独を募らせていく。一方、アンナの写真は話題を呼ぶと同時に倫理上の議論を巻き起し、児童虐待のかどで裁判所から保護者失格の烙印を押される。ヴィオレッタの親権を失いそうになったアンナは弁護士に救済を求めるが、ヴィオレッタの母に対する嫌悪はますます募っていくのであった……。
アンナ
ヴィオレッタ
マミー
エルンスト
ジャン
アップダイク
アントワーヌ・デュピュイ
監督、脚本
撮影
衣裳デザイン
音楽
脚本
脚本
製作
美術
編集
[c]Les Productions Bagheera, France 2 Cinema, Love Streams agnes b. productions [c]キネマ旬報社
普通じゃない、全ての問題を‘芸術だから’で伊藤両断するのはいかがなものか。自分の娘だから自分の要求に応えてくれると勘違いする。もちろん当初は母親の愛情を埋めることができると、モデルをおどおどしながらも楽しんだ。化粧に服装、ポージングによって今までにない自分を見た。でも何より、母親と一緒というのが一番嬉しいことだった。
度を過ぎれば自分の芸術への納得レベルではなく、世間の批評が気になる。母の愛は全て自己メリット今さらのお話。話題になった写真は金銭的な価値は生んだのか。だって食事や住居が乱れきってたら、子供には芸術は無価値そのもの。
最終的に娘は母を恨んだ、大嫌いになった。しかしですね、実話を娘張本人が監督し、映画にしてしまった。裁判を起こし、母親から賠償金をもらっているのに、尊敬する人は母、そしてこの監督か。やはり血筋は争えない。この経緯を作ったのは、まちがいなく母親であり、その恩恵で今の彼女がいるのだから。
ふぅ、D.ラバンがここでは普通にみえます(笑)。新人アナマリア・ヴァルトロメイはルーマニア人かぁ。本当なら生粋、フレンチマドモアゼルが良かったけど。でも実際のエヴァ・イオネスコの少女時代よりめちゃくちゃ可愛いなぁ。にしてもあの容姿は学校で浮くのは必須。あっ、今もか。
でも、親ってずるい。親の愛情の代償に自分の才能を世間から認めさせてやるタブーでない?親の七光りも錆びつくがね。
エヴァ・イオネスコが、まったくこういった業界ではなく、堅実で地味な職業だったらと思う。
モデル、女優としても活躍し、近年では写真作品を発表しているフランスのアーティスト、エヴァ・イオネスコ初の長編映画監督作品。母であり、娘であるエヴァをモデルにした写真集「鏡の神殿」(「Temple aux miroirs」、1977年)を発表しセンセーション呼んだ写真家、イリナ・イオネスコとの関係を映画化しています。主演はその母アンナにイザベル・ユペール、主人公「ヴィオレッタ」にルーマニア生まれの新人アナマリア・ヴァルトロメイ。
映像のキャリアがあるとはいえ、初の長編監督作品としては完成度の高い作品。派手なカット割りやBGMの使用は抑制され美意識の下に全体のトーンも統一されて、「母親が娘のヌードを撮影する」というスキャンダルなパートも不自然無く描かれています。