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投稿レビュー(1件)高地戦は星4つ

戦争の無惨さを描いてこれ以上の映画があるか (投稿日:2013年2月9日)

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優れた韓国映画が共有するのは、「乾いた哄笑」だと以前に書いた(『母なる証明』)。これはイメージだが今回は登場人物自身がまさに「哄笑」する場面に出会った。ラストシーンで韓国軍のカン・ウンビョ中尉と北朝鮮軍のビョン・ジョンユン中隊長が、「何のために戦うのか、知っていたが忘れた」と言って高笑いする。戦争の無惨さ無意味さを表現してこれ以上のものはないだろう。

もう一つの「乾いた=涙を拒否する」については、チャン・フン監督は観客に泣く時間をたっぷり取ってくれた。やっと休戦協定が結ばれるが、それが効力を発揮するまでの12時間の間に少しでも「領土」を拡げようと、両軍に総力戦が命じられる。休戦を知って戦意を喪失している兵士には無意味な戦い。濃い霧の中で睨み合う両軍。死の沈黙の中で両陣営から期せずして湧き上がる望郷の歌に、客席のあちこちから、すすり泣きを越えた嗚咽が聞こえた。

第二次世界大戦では戦場にならなかった朝鮮半島で、戦争と言えば朝鮮戦争を指す。同じ民族同士が殺し合う汚れた戦争。虫けらのように死んで行く兵士を撮るには遠景しかないのであろう。リアルに徹しそれを越えてしまう非情なカメラワークに、息もつけぬほど圧倒されっぱなしだった。

後方の司令部が生ぬるく考えることと、命をやり取りする前線とは違う。命を守るためには味方も殺す。敵を討つために仲間を標的にする。無能な司令官は殺され戦死したことにする。兵士の結束に上官と言えども口を挟めない。この辺りこれまでの戦争映画にない描き方である。

スパイ活動を調査するために派遣されたカン・ウンビョ中尉だが、共に戦う中で認識不足を思い知しらされる。両軍間で30回以上も奪取を繰り返す山上の洞穴の中で生まれた奇妙な通信手段。兵士たちには家族も家もあることを知る胸が熱くなる人間的行為だ。だが何とささやかな。

それは本当に「何とささやかな行為」でしかない。画面は、彼は殺さないで欲しい、彼は助かるに違いない、霧は晴れないだろう、死なないでくれ、といった観客すべての願いや予測を裏切って無情に進む。冒頭に述べた「乾いた哄笑」は矢張り生きている。

日本映画も、今後戦争映画を作る際には、良くやりがちなセンチメンタルなエピソードを挿入してヒューマニズムを気取る前に、本作品を見習って、戦争の本質に迫る「非情さ」に徹して欲しい。(2013年2月8日 於シネマジャック) »ガイドライン違反報告

投稿:すすむA

評価:5
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2020/8/10更新
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