春との旅|MOVIE WALKER PRESS
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春との旅

2010年5月22日公開,134分
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「愛の予感」がロカルノ映画祭で金豹賞(グランプリ)に輝くなど、国際的な評価も高い小林政広監督による人間ドラマ。祖父と孫の姿を通して、生きることを見つめる。

ストーリー

※結末の記載を含むものもあります。

4月の北海道。足を痛めて、18歳の孫娘・春に面倒を見てもらっている元漁師の忠男。ある日、春が仕事を失ってしまったことから、忠男は最後の住まいを求めて、春と共に東北地方へ親類縁者を訪ねる旅に出かけることに。

作品データ

製作年
2009年
製作国
日本
配給
ティ・ジョイ=アスミック・エース
上映時間
134分

[c]2010「春との旅」フィルムパートナーズ/ラテルナ/モンキータウンプロダクション [c]キネマ旬報社

映画レビュー

4.2
  • ns_hind

    5
    2012/2/28

    行き場を失った老人と孫娘春の放浪を描いた人間ドラマ。

    孫娘には迷惑を掛けたくないが独りでは生きられない老人が長年疎遠となっている兄弟を訪ねて自分を養ってくれと頼むが誰にもそんな余裕はなく、孫娘と共にさすらう。

    日本映画の人間ドラマの最もコアな部分がこの作品です。
    原作/脚本/監督の小林政広の才能が圧倒的すぎる。これで終わりといわず是非これからも作品を作り続けて欲しいです。

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  • ほし★ママ。

    4
    2012/1/8

    試写でみせて頂きました。
    入り口で配られたアンケート用紙
    表は、上映前に答えよ!との事。

    Q:誰がお目当てですか?
    A:「徳永えりちゃん」です。

    えりちゃんの出演作は、何作か観ていますが
    『フラガール』『彩恋』『うた魂♪』と
    その演技が輝いていました。

    Q:次の名前(出演者がズラリ)で、あなたがご存知なのは?
    A:最後の方以外、全員存じております。

    最後の方、監督さんでした。 m(__)m
    このキャストは、もう素晴らしい以外ないでしょう・・・
    邦画ファンとしては、期待しない方がおかしいです。

    厳しい北の海の海岸すれすれに建つバラックから
    老人が転げるように出てくる。
    それを追って来る孫の春。
    追う方が、大きなリュックを背負っています。

    やがて、二人の背景が見えてきます。
    老人タダオは、都会に出たがっている孫を自由にする為
    兄妹の家で厄介になろうとしていたのです。

    訪ね歩く兄妹には総て「NO!」を突きつけられます。
    兄とはそりが合わず、姉には説教をされ
    末弟とは会えず、すぐ下の弟とは取っ組み合い~

    タダオは最初から、帰る場所がどこなのか
    わかっていたのかも知れません。
    甘える相手も目の前にいる春だけだと気付いて
    子どものようににダダをこねたりしてしまいます・・・

    そして、祖父の兄妹とのやり取りを見ていた春は
    自分も肉親である父に会たくなります。
    父に思いの丈をぶつけた春もまた
    帰る場所はひとつと気付きます。

    私の身内にも、老人が増えてきました。
    例えば、収入がないなら補助を貰うとか
    介護が必要なら申請すれば~が
    あの年代の人は踏み切れないみたいです。
    きっとタダオもその一人なんでしょう。

    春の父への気持ちも、タダオの戸惑いも
    その名演技とちょっと暗めの北国の景色
    静かな音楽で、胸に迫ってきました。

    なのに~~~何でこうなるの?
    確かに映画は、ストーリーじゃないと思います。
    でも、私はこのラストがどう考えても合わなかった。

    ラスト近くになってから、急にみんなが喋り出したのにも
    ちょっと違和感がありました。

    と、三人で会話してるのに、三人一緒のショットがない
    モニターに向かって喋っているのがバレバレのシーンも
    ちょっと醒めてしまいました。
    揃っての撮影が無理なら、違う工夫をして欲しかったです。

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  • はら

    4
    2010/7/17

     北海道の海岸の古びた漁師小屋に、元漁師の老人・忠男は孫娘の春と二人暮らしをしていた。
     忠男の娘で、春の母親は既に亡くなり、忠男は足を痛めており、漁に出る事は勿論、日常生活でさえままならない。生活は春が近所の小学校で給食係をすることで賄ってきたが、過疎化で小学校は廃校になり、春は失業してしまった。
     春は、この機会に都会に出て働きたいと考えた。
     忠男には、疎遠になっているとはいえまだ元気な姉兄弟たちが何人かいる。そうした家のどこかで、忠男の世話をしてもらう事が出来ないだろうか。
     忠男と春は家を出て、親戚の家を訪ねて回るのだが・・・

     この映画、出演者の顔ぶれが、とにかく豪華。
     忠男を演じるのは仲代達矢。忠男とそりが合わない長男を演じるのは大滝秀治で、その妻役が菅井きん。刑務所に入っている弟の内縁の妻を田中裕子が演じ、女手ひとつで温泉旅館を切り盛りする姉、茂子役には淡島千景。不動産業を営む弟、道男役は柄本明で、その妻役は美保純。春の父に香川照之、その妻に戸田菜穂。
     道ばたで酒飲んでいる元漁師の男と言うチョイ役が小林薫だったりします。
     こんなキラ星の如き、演劇界の大ベテラン、大先輩たちに囲まれて、春を演じる徳永えりが一歩も引かない存在感を見せます。
     がに股、猫背ぎみに、のそのそ歩く姿が素晴らしい。田舎の垢抜けない女の子らしさ全開。春という女の子になりきった演技を見せています。

     映画の形式としてはロードムービーですが、この物語が描く現実は、辛く、悲しい。
     多くのロードムービーが、若者が自分の居場所を探して旅立つのに対し、この映画は、老人が自分の居場所を求め、そして居場所どころか、自分さえ必要とされない事を思い知る物語です。
     頼れると思った兄弟には、それぞれの事情があり、忠男を受け入れる事が出来ません。
     そうして、漸く受け入れてくれそうになったのは、春の父親が再婚相手と暮らす家。でも、春の父親の再婚相手は、「自分の父になってくれ」と言います。
     血縁のない、義理の息子の妻の父になる、と言う事は、要するに別人になれ、と言うこと。
     そうして、自分が自分としてこの世界に居るべき場所がない、と悟った男は、絶望の帰路の途中で斃れるのです。
     これは、そんな孤独な男が自分を知るための帰り道のない旅。
     でも、それは、人との繋がりが希薄になってしまった現代人が辿る、将来の姿のように思えてなりません。

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    ネタバレあり
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