SR サイタマノラッパー|MOVIE WALKER PRESS
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SR サイタマノラッパー

2009年3月14日公開,80分
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インディ界の若き俊英、入江悠が放つ異色の音楽ドラマ。音楽的環境が劣悪な地方都市でラッパーを目指す若者たちの青春模様を、シニカルかつ温かに描き出す。

ストーリー

※結末の記載を含むものもあります。

レコード屋もライブハウスもない、埼玉の田舎町。そこで暮らすIKKUはブラブラしながらもラッパーを目指し、オリジナルトラックの制作に励む。そんなおり、東京でAV女優をしていた同級生の千夏が帰郷してくる。

作品データ

製作年
2008年
製作国
日本
配給
ロサ映画社=ノライヌフィルム
上映時間
80分

[c]キネマ旬報社

映画レビュー

3.3
  • mice29was

    4
    2011/10/30

    評判を聞いて見に行きましたが、
    正直「そういうことってあるよねぇ」とか「こういう人っているよねぇ」程度でした...ラストシーンまでは

    ラストの緊張感がたまらないです。
    自分の感情を発露する手段を会得した瞬間。
    そしてそれに答えてくれる理解者の獲得。
    最後の1拍の空白にそれが凝縮されていると思います。
    あの1拍のためだけにもう一度みたい、そう思いました。

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  • すすむA

    5
    2011/5/8

    2009年の「幻の作品」を今回ようやく観ることが出来、それが評判通りの秀作であったのが嬉しい。

    ラッパーの現場を初めて知ったのだが、曲(と言うかリズム)はその道の達人に依頼し、演奏者がその上に自由に歌詞を乗せて行くらしい。楽器を奏でる必要はない。歌と言うよりは語りで、演奏者の思いのたけが表現される。日本にも原型があったなと思いつく。秋田音頭の「地口」だ。ラップは恥ずかしがり屋の日本人に似合う。

    SHO-GUNGと名乗るこのグループは高校卒業後も定職に就かずひたすらラップに血道を上げている。彼等のキャラが実に良い。トムとイックの身なりからは想像しがたい植物人間的非暴力主義にたちまち引きつけられる。

    イックは時事ネタを織り込んで歌詞にパンチを効かせようと新聞をスクラップしている。と言って政治づいているわけではない。市民講座での演奏会ではおじさんおばさんたちからの、「市民税は払ったほうがよい」とか、「今はいいけど親が死んだ後どうするの」等の質問攻めにたじたじとなるシーンは実に笑わせる。

    男たちがモラトリアム状態でいるのに対して、同級生の小夏は東京でAV女優をやり、売れなくなって戻っている。彼等は「女の賞味期限は短い」とか評しながらもどこか彼女を尊敬し、「おめーたち、全然変わっていねえ」と侮られても頭が上がらない。ジェンダーヒエラルキーをひっくり返す若者らしい取り合わせも見事である。

    現実はキツイ。それぞれの決心がグループからの離脱となる。イックも食堂で勤め始める。建設労働者になったトムが仲間と飲みに店を訪れる。下を向いて顔を合わせようとしないトムにイックがラップで語りかける。ためらっていたトムが応えて歌い出す。「夢じゃ腹はふくれない」。イックが返す「SHO-GUNG、俺等第2ステージの準備中」。

    夢みる青春時代は過ぎても夢のない人生はない、と彼等は言うのである。ここに来てラップは心の叫びとなる。このラストシーンは胸を打つものがある。

    サイタマとは何だろう。イックが歩く農道の背景に巨大な送電塔が写る。電気は東京で使われるのだろう。サイタマとは東京に隣接しながら東京にはどこまでもなじめないところと言っているようだ。何気ない光景が様々な念をかきたてる、的確なロケハンティングに脱帽した。

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    ネタバレあり
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