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投稿レビュー(5件)隠し剣 鬼の爪は星4つ

駄作『ラスト・サムライ』と対極に立つ、武士の時代の終焉への最良の「白鳥の歌」、それが本作である (投稿日:2010年4月8日)

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 時代設定、人情時代劇のジャンル性、ストーリー展開、藤沢周平原作・山田洋次監督・朝間義隆脚本のトリオなど、その共通性が多い、本作品『隠し剣 鬼の爪』(2004年作)と前作『たそがれ清兵衛』(2002年作)とは謂わば双子的存在である。同監督による、藤沢周平時代劇三部作の完結篇と言われる『武士の一分』(2006年作)は未見なので、コメントは控えたいが、そのストーリーを読んだかぎりでは、前二作とは若干趣が異なっているようである。

 東北地方の日本海側にある、架空の地方小藩「海坂藩」、そこで生活する平侍片桐宗蔵(本作)と井口清兵衛(前作)。いづれも五〇十石取りの下士である。時代設定は同じ幕末のことだが、前者が文久元年の1861年のことであるのに対して、後者は慶応年間の1865年のことである。片桐、井口両者とも、普段は目立つ存在ではないが、刀を取らせれば、腕の立つ武士である。そして、両者ともその腕を買われて、上意討ちの討手として、しかも藩内の改革派に対する処罰の手先として遣わされるという運命を負うのである。つまり、二人とも藩命の名の下に保守派の「犬」として利用され、その内容がどうであろうと、「藩命」であることを結局は「当然のこと」として承知し、その「藩命」を実行するのである。これがまた、「武士の分」でもあった。ただ、改革派への処罰という点では、そこに幕末という時代性が表徴されており、両作ともそれが「武士の時代」の終焉への「白鳥の歌」であることを、観る者は銘記するべきであろう。天皇を武家の棟梁と見た、トム何某が主演の駄作『ラスト・サムライ』と対極に立つものである。

 『たそがれ』の語り口が、当時幼い娘であった女の観点から語るという形式を取っていること、このことが失われたものへの哀悼の感を強めている。ラスト・シーンでは、回想からストーリー上の現在となり、当時の幼い娘が明治時代に入って中年女性となって(岸恵子、気品があっていい!)、父と継母朋江の墓の前に立つ。そして、オフレコで、武士の魂、剣を取っては腕の立った井口が戊辰戦争で「鉄砲」に撃たれて命を落とした、と語られるのである。時代が変わり、「武士」という存在が過去のものになったこと、そして、その歴史的事実から観る者は何を考えるべきか。このラスト・シーンが、ストーリーの先の見える単純な人情物に歴史性の深みを与えているのである。

 他方、『隠し剣』ではどうか。片桐が討つべき、元同門の相手は、片桐の捨て身の剣の一撃を受けたものの、結局は新式銃に剣を持った右手を撃ちもがれるのである。それまで、通奏低音として作品の中に流れていたテーマ、片桐自身が学んでいた英吉利式歩兵練兵法に代表される西洋式の軍事技術が伝統的な武士の剣法を圧倒し、その存在意義を失わせるだろうことを、その血生臭いが、あっけないシーンで決定的に象徴したのである。そうであれば、何故に片桐を討たせに行かせたのか。初めから銃兵隊に撃たせればよいものであろう。この武士社会が形骸化していること、更に、自らに下った藩命なるものの恣意性が顕現したことが、片桐をして、武士の身分を捨て、蝦夷へ行く決意をなさしめたのであった。しかも、それは「桜田門外の変」の翌年のことで、この時点では、誰も徳川幕藩体制が簡単に崩壊するとは予想だにもしていなかった時期のことである。安物の新式大砲の発砲訓練の風景や西洋式の走り方の導入の際に起こるチグハグが醸し出すユーモアを最大限に利用しながら、山田監督は、巧妙に時代変革の非情さを描ききっているのである。

 『たそがれ』では、時代の流れに背を向け、自分の家族の幸せを得るために汲々として生きた井口、その内向性が何処から来ているのかが映画では説明されていなかったが、歴史の変動は結局はそんな井口をも捉えてその小さく短い幸福をも井口家から奪い去るのであった。そんな陰のストーリー展開を持つ『たそがれ』に対して、『隠し剣』は、陽のストーリー展開を持った作品である。その日常のユーモアと時代の変動の厳しさを両方描きながら、作中で主人公がその運命を自ら「開拓」していく過程に目が据えられている。この意味でも、元々は百姓の娘で片桐家に奉公にきていたきえとの、『たそがれ』とは逆方向の身分違いの結びつきは、片桐が武士たることを捨てて初めて可能になったのであり、片桐が未開拓の蝦夷で切り開いていく未来の大事な保証だったのである。旦那様を立てながら、自分は実は一枚上手の「きえ」であれば、その保証となることもまた可能であったろう。本作、脚本の勝利というべきである。 »ガイドライン違反報告

投稿:やまひで

評価:4
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まっすぐな気持ち (投稿日:2009年2月9日)

藤沢周平の世界はどうも似通っていて、先が読めてしまう。
剣の達人、不運な生い立ち、身分の違う恋、…
永瀬の演じる片桐の侍として、男としてのまっすぐな気持ちが、よく表現されている。
松たか子のきえも、主人を慕うひたむきさをよく演じていると思う。
山田監督作品ならではの、人間のあたたかい部分が感じられる。 »ガイドライン違反報告

投稿:ゆきちゃん

評価:3
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男気溢れる恋愛物 (投稿日:2007年12月9日)

『時代劇三部作』の第二弾。DVD鑑賞。
前作に続き、下級武士の淡い恋を描いた作品。
ほんのりとした笑い、しっとりした涙…、全体的に起伏に富み、非常に見応えのある作品。
主従の言葉で別れ、それをラストのクライマックスに結び付けたのは見事。
第一弾で絶賛された光の使い方も、さらに進化して観易く感じた。
次の『武士の一分』をもって完結するわけだが、私はこの作品が一番好きです。 »ガイドライン違反報告

投稿:バロン

評価:5
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永瀬正敏の演技 (投稿日:2007年5月27日)

よかったです。もともと永瀬正敏が好きだったんですが、時代劇も無難にこなしてました。東北なまりも違和感がなかったし、クールな演技の中にも熱くこみ上げる気持ちの表現の仕方が上手いなぁと思いました。「たそがれ清兵衛」「武士の一分」と比べられてしまいますが、これはこれで非常によくできた作品ではないかと思う。松たか子は和風な顔なので、和服が似合います。きれいでした。 »ガイドライン違反報告

投稿:たけ

評価:3
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山田洋次の職人芸が冴えわたる。 (投稿日:2006年10月20日)

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「たそがれ清兵衛」に続く山田時代劇第二弾。
同じ藤沢周平原作で、下級武士の悲哀と愛情を描いた内容の大まかな骨格は同じなのだが、違うところが二つ。清兵衛が腕は立つけど、最後まで普通の男だったのに、今回の主人公は最後の最後に必殺の隠し剣を使う。この場面が一瞬だけど、めちゃくちゃカッコいい!
それと、ラストの演出。「たそがれ」はエピローグに主題歌で余韻を味あわせたが、今回はスパッと終わる。より高度な演出の切れ味を感じさせて、見事!ただ、役者のうまさ、味わい深さでは、「たそがれ」に軍配。 »ガイドライン違反報告

投稿:ネット紋次郎

評価:4
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