かあちゃん|MOVIE WALKER PRESS
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かあちゃん

2001年11月10日公開,97分
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山本周五郎の同名小説をもとに、巨匠・市川崑監督が贈る人情時代劇。5人の子供を育てる心温かい母親の姿を通し、“人を信じること”の尊さを笑いと涙を交えて描く。

ストーリー

※結末の記載を含むものもあります。

天保末期、貧窮を極める江戸時代。貧乏長屋に暮らす未亡人おかつ一家は、5人の子どもが総出で働き、多額の金を貯めていた。それを知った若い男・勇吉が盗みに入るが、おかつに諭されたうえに同居することに。

作品データ

製作年
2001年
製作国
日本
配給
東宝
上映時間
97分

[c]キネマ旬報社

映画レビュー

3.8
  • mentaico00

    4
    2015/7/5

    キャストがあまり豪華なわけではないけど、見終わった後に、とても温かい気持ちになる掘り出し物の一本でした。原作が山本周五郎と聞いてなるほどなと。人が幸せに感じて生きるということは、富の絶対値では決してないですね。最低限の富はもちろん必要だけどね。

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  • 晴耕雨読

    5
    2010/1/24

     天明二年から同七年にかけ、東北地方などの冷害を発端とする天明の大飢饉がおこり、さらに天保四年から同十年にかけて天保の大飢饉がおこりました。農村や都市には貧窮者が溢れ、農民の逃散や強訴・百姓一揆が頻繁に発生し、村政への参加や村役人の交代を求めて、貧農がおこした村方騒動もおこった。そして、社会不安は都市へも波及して、米屋や高利貸しを襲う打ち壊しが激化した時代を背景にした名作映画には、天明年間の山田洋次監督の「運が良けりゃ」と、天保年間の市川崑監督の「かあちゃん」があります。BS朝日は平成大不況下の2010年の現代にこの映画を放送するというタイムリーな企画を立ててくれました。

     原作は山本周五郎であり、黒澤明監督が好んで映画化していた江戸庶民の人情溢れる姿を市川崑監督が映画化しています。21世紀の現代にあって、東京23区内で犯罪発生率が最も低く治安が良い区は荒川区だそうです。荒川区は江戸っ子と呼ばれる三代以上続いた家系の人々が多く居住しており、向こう三軒両隣りの長屋に住む人々は義理・人情を大切にしていることが犯罪発生を防いでいるのだと思います。物語はそんな下町の長屋に住む貧乏人の子沢山の一家を中心に展開しますので、大飢饉で苦しむ大工、左官などの建設業界の末端で働く庶民を現代の日本の現状と重ね合わせることも出来ます。民主党政権のばら撒き政策で喜ぶのはこの映画に登場する大酒のみの熊さんであり、昼間から居酒屋で「かあちゃん」一家を誹謗中傷する四人組であり、貧しくとも誇りを失わない「かあちゃん」一家はお上の施しなどを喜ぶことはないでしょう。

     登場人物たちのセリフは古典落語を彷彿とさせるユーモアとウィットに富んだ会話であり、そんなシーンのカメラは固定され、登場人物を横に並べただけで、一切のカメラワークはありません。また銀残しの映像は居酒屋の赤提灯、かあちゃんの赤い裁縫用針刺し、ばあさんのあだ名で呼ばれるおさんの赤い半襟と言ったように赤を印象的に際出せています。映画は四人の怠け者が登場する居酒屋の画面と貧乏長屋のかあちゃん一家の室内が中心ですが、かあちゃんの善意に救われる家族が戻って来るときのカメラは貧乏長屋全体を俯瞰撮影で一気に見せてくれます。俯瞰撮影はかあちゃん一家の兄弟と元・泥棒の青年が完全に心を通わせたラストシーンでも登場しますが、貧乏長屋の狭い空間から広い世界に飛び出す俯瞰撮影が秋晴れの青空のような爽やかで心地よい開放感を与えてくれているのです。「犬神家の一族」や「おはん」でも見せてくれた市川監督のセットへの拘りは貧しいながらも和空間の機能美を生かした美術監督・西岡善信による本物の再現が見事です。

     「かあちゃん」は“性善説”を証明してくれます。私たち観客はベタな理想に過ぎないと分かっていながら、「かあちゃん」が全身全霊を込めて正しいことを実践して見せる姿に人間の証明を思い出させてくれます。平成大不況とダブる天保の大飢饉の現状を打破するには“性善説”しかないのでしょう。天保の改革を行った水野忠邦の政治は二年しか続かず、幕府の権威は衰えていきました。そんな政治の無力な中にあって庶民の清く正しく美しい精神が正義の再生に繋がる姿はなんと美しいのでしょう。

     PS…全くの余談ですが…国政に対して地方では、薩摩藩に見られる、下級武士から登用された調所広郷(ずしょひろさと)が奄美大島特産の黒砂糖の専売を実施したり、琉球との貿易から利益をあげるなどして財政を立て直しました。長州藩では村田清風が紙や蝋の専売制を緩和したり、他国の廻船によって齎せる積荷を抵当にして、資金を貸付けたり、委託販売などを行って利益を上げました。肥前藩では鍋島直正が均田制によって農村の再建をはかった他に有田焼を専売制にして収入を増やしました。土佐藩でも支出を切り詰めて財政再建をはかっていますが、これら地方雄藩がやがて徳川封建社会を打倒することが印象的です。歴史を振り返ってみることで現代が見えてきます。

    【BS朝日】鑑賞

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