本木雅弘
寺田ヒロオ
今から40年ほど前、石森章太郎、赤塚不二夫、藤子不二雄ら、多くの明日を夢見る若いマンガ家たちが青春時代を過ごした実在のアパート“トキワ荘”での彼らの物語を、史実に基づいて描いたフィクション。監督は「東京兄妹」の市川準。脚本は市川と自主映画作家で「東京兄妹」でも共同脚本をつとめた鈴木秀幸、演出助手も兼ねた森川幸治の3人による共同。撮影も「東京兄妹」の小林達比古が担当した。主演のトキワ荘のリーダー格・寺田ヒロオに「GONIN」の本木雅弘、赤塚不二夫に「静かな生活」の大森嘉之がふんしたほか、小劇場、自主映画などで活躍する個性派が多数、実在のマンガ家役でキャスティングされている。96年度キネマ旬報ベストテン第7位。2021年2月12日より、デジタルリマスター版公開。(配給:カルチュア・パブリッシャーズ)
※結末の記載を含むものもあります。
トキワ荘に住むマンガの神様・手塚治虫の向かいの部屋には、あちこちに原稿の持ち込みをしながらマンガ家としてのスタートを切ったばかりの寺田ヒロオが住んでいた。ある日、藤子不二雄のペンネームで合作でマンガを描いている安孫子素雄と藤本弘のふたりが、手塚を訪ねてトキワ荘にやってきた。あいにく手塚は留守だったが、寺田は田舎から出てきたふたりのために食事をご馳走してやり、東京での生活についていろいろと教えてやるのだった。その後、手塚は別の仕事場に引っ越し、上京した安孫子と藤本がその空部屋に入った。それに続くように、トキワ荘には『漫画少年』の投稿仲間だった石森章太郎、赤塚不二夫、森安直哉、鈴木伸一らマンガ家の卵たちが次々と集まり住むようになる。トキワ荘によく遊びにきているつのだじろうを加えた彼ら8人は“新漫画党”を結成し、寺田の部屋に集まっては、マンガの未来についての話に花を咲かせた。家賃を滞納するほど生活は苦しいながらも希望に燃えて好きなマンガに打ち込む彼らは、少しずつマンガ家としての実績を重ねていく。そんなころ、『漫画少年』の学童社が倒産した。以前からマンガとアニメーションの二足のわらじを履いていた鈴木は、これを機会にアニメ一本でやっていくことを決心し、トキワ荘を出ていく。『漫画少年』が廃刊になってもマンガ人気はすたれず、石森と藤子はあちこちに連載を抱える売れっ子になっていた。寺田は相変らずマイペースで描き続け、石森のアシスタントをしながらなかなか世に出るチャンスをつかめないでいる赤塚の面倒を見たり、彼らをよくまとめていた。その後、ギャグマンガの才能を見いだされた赤塚はとんとん拍子に売れっ子になり、同じころ、自分の描きたいものとそれが認められない現実とのギャップに悩んでいた森安が、こっそりトキワ荘から引っ越していった。寺田は、速いスピードで変化していく少年マンガの世界に自分が合わなくなってきていることを感じつつ、それでも自分の好きなものしか描けないでいた。そしてある冬の日、寺田は“新漫画党”のみんなで写した一枚の写真を残して、トキワ荘を出ていった。
寺田ヒロオ
安孫子素雄
藤本弘
石森章太郎
赤塚不二夫
森安直哉
鈴木伸一
つのだじろう
水野英子
手塚治虫
石森の姉
つげ義春
棚下照生
編集者・丸山
学童社編集長
学童社編集者・本多
学童社事務員
娼婦
寺田の兄
藤本の母
監督、脚本
製作総指揮
製作総指揮
プロデューサー
プロデューサー
原作
原作
原作
原作
脚本
脚本
撮影
照明
編集
録音
美術
音楽
音楽
スクリプター
助監督
[c]キネマ旬報社
2014年3月2日、神保町シアターで鑑賞。
ゆったりとした時間の流れの中での物語がホノボノとしている。
トキワ荘に、集まり散じる漫画家たちの想いが伝わる「実話に基づいたフィクション映画」。
この映画、時間経過を描くシーンでの編集が上手くて、なかなか良かった。
ただ、昭和を描く前半シーンで「昭和当時の白黒写真を使うのは反則」だと思う。
【市川準監督レトロスペクティブ】で渋谷ユーロスペースで観ました。
言わずと知れた漫画家の聖地「トキワ荘」に集う面々を描いた作品です。手塚治虫に惹かれた漫画家志望の若者が続々集まって来ます。手塚自身はまもなく出てしまうのですが、集団はそれ自身で力を持ち始めます。そしてその中でも「石森章太郎」「赤塚不二夫」「藤子不二雄」が抜け出し・・・、という話です。
物語は、その中で中心的な役割を果たして来た、「寺田ヒロオ」を中心に進みますが、彼も実は時代の潮流に乗れない一人で、「負け組」に入って行きます。
これを観ると、本木雅弘というヒトは、非常にたたずまいが丹精で、後の『おくりびと』のヒットにつながる持ち味を出していますね。自分がかわいがっていた後輩たちに次々に抜かれていく悲哀を、ことさらあわてず、たんたんと受け入れて行きます。普通、なかなかこのようには、達観できませんね。