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吉川英治原作から「黒蜥蜴(1962)」の新藤兼人が脚色、「誘拐」の田中徳三が監督した異色時代劇。撮影は「雨の九段坂」の本田平三

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大岡家の養嗣子市十郎は娘お縫との縁組みまでしていながら、愛人お袖の水茶屋を根城に、ごろん棒と徒党をつくって暴れ回っていた。ある日、お袖が市十郎と対立する銀歯組一味に誘拐された。かねて銀歯組は御金蔵の絵図面を秘める大岡家の土蔵破りをもくろんでいたが、お袖の命と引きかえに大岡家への手引きを市十郎に迫った。いとしいお袖のため、市十郎は黒装束に身を包んで銀歯組とわが家へ忍び入ったが、実兄主殿は一味の兇刃を浴びて非業の最期をとげた。自責の念にかられ切腹しようとする市十郎を、養父忠左衛門が訓した。それから十五年……。江戸市中に五人組の怪盗が出没、将軍吉宗は南北の両町奉行に逮捕を厳命した。時の南町奉行こそ、市十郎の変る姿であった。一夜、五人組が消えたとおぼしき場所で一人の美しい夜鷹が捕えられたが、忽然と現われた美少年が番太を新って、夜鷹を救い去るという事件が起きた。その美少年は、越前守が市十郎の昔、お袖との間にできたお燕であった。市十郎に捨てられたお袖は、銀歯組の頭領に手ごめにあい情婦になっていたが、名声高い越前守を恨み、五人怪盗の一人として悪事を働いているのだった。それを知った越前守は悩むが、心を鬼にして一味を捕えた。裁きの日、兇賊が奉行と関係深い人間と判って、町人たちは奉行所に押し寄せ、越前守の異例のはからいで白洲に入ることを許された。引き出されたお袖、お燕らは越前守の不実をなじるが、越前守は諄々と当時の事情を明かし、奉行として一味の罪を裁き、自らの罪も裁くのだった。お袖たちはその言葉に心をうたれて泣き崩れた。かくて、町人たちも感動のうちに裁きは終った。部屋に戻った越前守は、成行きを案じて来合わせていた将軍吉宗に死ぬ覚悟を洩らすが、吉宗は強く押しとどめ、天下万民のため生きて苦しむことを命じるのだった。越前守の眼には深い悲しみと共に、あらゆる苦悩を踏み越えようとする堅い決意があふれていた。

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作品データ

製作年 1962年
製作国 日本
配給 大映
上映時間 78
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スタッフ

監督 田中徳三
原作 吉川英治
脚色 新藤兼人
企画 鈴木晰成
撮影 本田平三
音楽 鈴木静一
美術 加藤茂
編集 菅沼完二
録音 海原幸夫
スチル 小牧照
照明 伊藤貞一

キャスト

大岡市十郎 長谷川一夫
お燕 中村玉緒
お縫 丹阿弥谷津子
お袖 月丘夢路
徳川吉宗 勝新太郎
阿能十 島田竜三
山本左右太 林成年
刑部様 安部徹
大岡主殿 須賀不二男
赤螺三平 沢村宗之助
中岡亀次郎 山路義人
大岡忠右衛門 香川良介
大岡兵九郎 南部彰三
中山出雲守 南条新太郎
辰三 市川謹也
小林勘蔵 原聖四郎
山善 横山文彦
そば屋の親爺 藤川準
薮田助六 堀北幸夫
喋る番頭 岩田正
船頭 菊野昌代士
瓦版売り 越川一
由太 志賀明
喋る町人 滝川潔
どんぐり徳 沖時男
番頭忠吉 大杉潤
市川義平太 浜田雄史
太った乞食 山岡敬四郎
庄七 木村玄
山善の妻 小林加奈枝
喋る女 滝のぼる
飯屋の女 大谷鷹子
猿ぐつわの女中 谷口和子
藤尾 六條奈美子
きんきん声の女 若杉曜子
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