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投稿レビュー(1件)日本暗殺秘録は星3つ

シネマヴェーラ渋谷の英断!に感謝感激!! (投稿日:2009年5月23日)

 任侠映画全盛期の東映がプログラムピクチャーの制限がある時間を拡大して、142分という大作を撮った姿勢は大いに評価出来るでしょう。但し、当時の自民党保利茂幹事長から上映中止の申し入れがあった曰くつきの映画であるために、「黒部の太陽」同様にビデオやDVDで観ることが出来ない埋もれた傑作でしたが。しかし「シネマヴェーラ渋谷」が本編を上映。レビュータイトルにも書き込んだように、40年ぶりに「幻の名画」を観ることが出来ました。

 脚本は「仁義なき戦い」の笠原和夫と監督でもある中島貞夫の共同で書き下ろされたオムニバス形式の作品であり、近代日本のテロの歴史を、幕末桜田門外の変から226事件までを一気に描いています。中でも血盟団事件に100分間スポットを当てて、千葉真一扮する正義漢の青年が政治の荒廃によって、どん底の生活を余儀無くされる中、そこから這い上がるためにテロリズムに感化され、テロリストになるまでを緻密に描いていますが、性格俳優・千葉真一なんて初めての人には絶対お勧めしたい一編です。テロリズムと聞けば狂信的な人間を思い浮かべてしまいますが、極左翼、極右翼共にピュアーでストイックな人間であることを描写しています。

 東映オールスター出演ですが、片岡千恵蔵、以下、高倉健、鶴田浩二、菅原文太といったスター俳優たち全員がテロリストを演じ、悪役が市井の人間といった逆転のキャスティングが面白いです。世界同時不況の2009年にあって、「蟹工船」の本がベストセラーになる現在、この映画をDVD化することは不可能に近いかもしれません。40年前は映画館を出た観客達の目つきが異様にすわっていたことも思い出しましたが、渋谷円山町の観客達はインテリ風が圧倒的に多かったです。226事件の青年将校たちの銃殺シーンには本名と享年がテロップで流れますが、壮絶なリアリズムは私たち観客の大脳を撃ち抜く迫力があります。

 尚、壮絶なリアリズムと書いたのは小学館より上梓された「二・二六事件秘録(一) 相沢事件関係資料 二・二六憲兵調書」に刑場要図が掲載されており、それを忠実に再現したスタッフの努力に敬意を表するとともに、以下のように記述されていたからです。…午前五時三分射撃指揮官は射手田畑少尉に発射を命じたるに依り、同少尉は受刑者の眉間を射撃したる処同箇所の命中し、後頭結節部に貫通し出血甚しく、軍医は直に受刑者の創傷及心臓脈拍を検し…とあるからです。

 226事件は警視庁検閲課による報道禁止によって、ツンボ桟敷に置かれた国民は、やがて支那事変から大東亜戦争へとかりたてられ、戦争遂行の前には、いつしか二・二六事件のことなど関心の外に去っていった。

 そして現代、暗殺を超える思想とは何か

※参考文献「二・二六事件月報」小学館
※参考文献「二・二六事件秘録(一)相沢事件関係資料 二・二六憲兵調書」小学館

【シネマヴェーラ渋谷】妄執・異形の人々Ⅳ 特集鑑賞
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投稿:晴耕雨読

評価:5
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