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投稿レビュー(1件)江戸川乱歩の陰獣は星3つ

香山美子の最高傑作 (投稿日:2009年5月22日)

 “夜の夢こそ誠”の言葉を残した日本探偵小説の生みの親である、江戸川乱歩の原作には横溝正史以上の傑作が沢山あるのだが、猟奇的嗜好ばかりが強調されてしまい、エログロ中心の低俗な映画化作品が大半になってしまっているのが残念。私自身が映画化を指揮出来るならば、「パノラマ島奇談」や「白髪鬼」、「人間椅子」、「妖虫」、「化人幻戯」の5本を選択して、耽美派の名匠にメガホンを取って貰おうと勝手に想像しているが、推理小説の登竜門である乱歩ファンは大勢存在することだから、原作の話はさておき、映画のレビューに専念することとする。

 「陰獣」は、そんな耽美派の名匠、加藤泰監督(※東映任侠映画の、緋牡丹博徒シリーズの名編である「花札勝負」と「お竜参上」を演出)が演出した傑作に仕上がっている。原作では、隅田川に架かる吾妻橋の便所で死体が発見される場面だけでも乱歩ワールドを堪能出来るが、映画も推理小説家による殺人事件解明をミステリアスにかつエロチックに描いている。その中心になるのが、人妻・小山田静子であり、香山美子が魅力たっぷりにヒロインを演じていて、私が知る範囲では彼女の最高傑作ではないかと思うのである。碁石を打つ音を聞いて、鞭の音を連想する場面など数々の秀逸なシーンがあるので、是非にも推薦したい乱歩映画の成功作の一作として記憶に留めておいて頂きたい。

 また、作品の構図として面白いのは謎を解明する、あおい輝彦演じる主人公の寒川を本格推理小説作家として、大江春泥を怪奇幻想推理作家とした設定にあります。江戸川乱歩はどちらの分野にも優れた作品を生んでいるが、当時はこの二大潮流が推理小説の世界に顕著に見られた。近年は松本清張による社会派推理小説というジャンルが生まれた。しかし、21世紀に入って、島田荘司が再び本格推理小説の魅力を発表すると、これに呼応するかのように、綾辻行人を始めとする京都大学ミステリー研究会が本格推理小説の醍醐味を伝えてくれている。講談社が主催する江戸川乱歩賞を受賞した新人作家たちも本格推理小説の面白さを現代に伝えてくれている。

 映画の脇役陣も芸達者な性格俳優を揃えており、松竹の意気込みが伺える。それは、若山富三郎、大友柳太朗、川津祐介、加賀まりこ、倍賞美津子、田口久美、中山仁、仲谷昇、野際陽子、尾藤イサオ、藤岡琢也、菅井きん…であり、箸休め的なシーンである船乗り場での藤岡琢也と菅井きんのやり取りなどは娯楽映画を知り尽くした加藤監督の真骨頂と言えるだろう。
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投稿:晴耕雨読

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