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投稿レビュー(1件)県警対組織暴力は星4つ

権力構造をダイナミックなドラマ構成の中で浮上させていく (投稿日:2009年5月25日)

 東映実録路線の中にあって燦然と輝く傑作であり、日本映画史上の中にあっても特筆すべき作品であると言っていいでしょう。個人的には黒澤明監督の「七人の侍」にも匹敵するくらいの名作「仁義なき戦い」シリーズ・五部作を撮った深作欣二監督が、その後に発表した「仁義の墓場」、「やくざの墓場・くちなしの花」と共に日本アクション映画史上屈指の傑作です。脚本は「仁義なき戦い」シリーズで一つの頂点を極めた笠原和夫ですが、本作品では更に新境地を切り開いています。世界像を網の目のような人間関係として提示し、そこにおける権力構造をダイナミックなドラマ構成の中で浮上させていくのですが、深作欣二監督は伸縮自在の演出で物語を練り上げ、キャスティングされた俳優陣たちの重厚な演技と存在感が日本フィルムノワールを作り上げたのです。

 映画の舞台は平和都市宣言をした被爆都市である西日本の架空都市であり、地元警察のマルボウ(捜査四課)巡査部長を演じる菅原文太と若干30歳のキャリア警察官に扮する梅宮辰夫の関係がドラマの基軸になります。この両者の対決に競売の不動産落札をめぐって政・財・官とやくざが絡んでくるのですが、ノンキャリア警察官はやくざとの持ちつ持たれつの関係が治安にも一役買っていることを熟知しているのに反してエリート警察官は学生時代から不良とは一線の距離を保ってきた謂わば純粋培養のグレーゾンを認めようとしない正義漢。しかし、この梅宮扮する警部補は不良を恐れて学生時代を送ってきた大半のキャリアエリート警察官とはチョッと異質で、柔道学生チャンピオンにもなったインテリ体育会系であり、政治手腕、人間懐柔策でも抜群の器量を見せつけます。

 映画は題名通りの警察対やくざの対立構造の中で人間同士の深い描写をいたる場面に散りばめて分かり合うことの難しさをメッセージにしています。やくざにはやくざの歴史があり、自浄作用も含め、変革を繰り返しながら時代に対応してきた。遅れている組は弱体化し、より進んだ組に吸収され、それは結果、組織の巨大化、システム化をもたらした。その動きを、警察が阻止したことなど、一度としてなかった。日本においては、警察と暴力団は共存共栄の関係を維持してきた。それは国家制度やそのときどきの政府の施政方針とも深くかかわった歴史がある。警察の高級官僚は、暴力団壊滅を声高に口にするが、現場に立つ警察官はそれがありえないことを知っている。「仁義なき戦い」シリーズの中でも笠原和夫による見事なセリフに打ちのめされてきましたが、本作品も感服する名セリフが数多く登場します。絶対正義を説くエリート警察官に対し、ノンキャリアの下っ端刑事が清濁併せ呑む極めつけのセリフを吐きます。「敗戦直後、上は天皇陛下から下は赤ん坊まで、横流しの米食らって生きてきたんで。あんたもその米で育ったんじゃろうが、おう!きれいごと言うんじゃったら、敗戦直後の罪を清算してから、美味い飯食ってみいや」完全に覚えている訳ではありませんが、このようなセリフだったと記憶しています。日本映画史上でも稀有な濃厚極まるセリフが満載の人間群像ドラマを御堪能下さい。

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投稿:晴耕雨読

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