ショーン・コネリー
James Bond
イアン・フレミングの小説をロアルド・ダールが脚色し、「第7の暁」のルイス・ギルバートが監督した007シリーズ第五作目。撮影は「ドクトル・ジバゴ」のフレデリック・A・ヤング、音楽は「さらばベルリンの灯」のジョン・バリーが担当した。出演は「素晴らしき男」のショーン・コネリー、「寒い国から帰ったスパイ」のバーナード・リー、「ミクロの決死圏」のドナルド・プレゼンスのほかに丹波哲郎、浜美枝、若林映子など。製作はハリー・サルツマンとアルバート・R・ブロッコリ。
※結末の記載を含むものもあります。
運航中のアメリカとソ連の宇宙のカプセルが、頻々と軌道から姿を消すという怪事件が起った。米・ソは互に相手国の仕業と疑い国際的危機は高まるばかり。イギリス情報部は、妨害ロケットが日本から発射されているらしいと探知した。007号ジェームス・ボンド(S・コネリー)は十日後のアメリカのジェミニ打ち上げまでに、敵の正体と本拠地、その目的をさぐれと命をうけた。日本の秘密諜報機関長田中(丹波哲郎)と秘書アキ(若林映子)の協力を得て、神戸に碇泊中の貨物船が怪しいとわかり、ボンドは神戸に急行したが敵の罠にかかり捕えられた。ボンドを救ったのは、赤髪の美女ヘルガ(K・ドール)だったが、そのため彼女は死んだ。日本南端のアキ島に不気味な事件が続き、さらに例の貨物船が現われたと知ると田中はボンドを日本人漁師に変装させアキ島に急行した。地元民の疑惑をさけるためボンドはキッシー(浜美枝)と結婚した。危険を共にしいつか愛しあうようになっていたアキは、別れの夜ボンドの身代りとなって殺された。アキ島の火口湖の底に敵の秘密基地を発見したボンドは、単身基地に潜入し捕えられていた米ソの宇宙飛行士たちを助けたが、妨害ロケットの発射をくい止めることはできなかった。敵は強大な国際犯罪組織スペクターの一号ブロフェルド(D・プリーゼンス)だった。その時田中の指揮する特殊部隊がなだれこみスペクターとの激闘が展開された。ボンドはロケットのコントロール・ルームに飛び込み妨害ロケットの爆破装置を押した。今はこれまでと覚悟を決めたブロフェルドは秘密レバーを引いた。火山全部が吹っ飛ぶような大爆発が起った。すばやく海上へ脱出したボンドとキッシーは飛行機から投げ落されたゴム・ボートに乗り、はじめてゆっくりと抱き合った。
James Bond
Tiger Tanaka
Aki
Kissy Suzuki
Blofeld
Osato
Helga Brandt
M
Miss Moneypenny
O
[c]キネマ旬報社
午後ローで鑑賞。
他のコメントにもある通り、前4作は3人の脚本家が共同で執筆していたのが、今回、英国作家R・ダール1人が担当。彼はフレミングの友人にして「チャーリーとチョコレート工場」等のファンタジー童話と、ブラックユーモアや狂気にあふれた短編小説を得意とする。そして彼は第二次大戦の元撃墜王!
なるほど、本作で空中戦に力を入れているのも分かる、分かる笑。
TBS放映時に見たのと違う短縮版で、両国国技館でのボンドガールその1:若林映子とのランデブー場面は今回初視聴。その一方で、若林が中盤で退場してしまうくだりはカット。訓練場となる姫路城内の銃撃戦もカット。この撮影でロケ隊が姫路城内を壊したので、以後数十年、姫路城内ロケは厳禁となったいわくつき。
日本人としては大変楽しい映画なのだが、表題の通り、007は未来志向が強すぎて、またまたサンダーバード寄りの荒唐無稽さ。
ファンタジーが得意なダールが脚本なのも、前の3人が嫌気が刺したからかもしれない。
他コメントで、私的勢力が米ソを戦わせるとあるが、本作をよく見ると、アジア某大国からの依頼なのが分かる。TBS版ではここが省略されていたと思う。某大国とは世界征服の「100年マラソン」で赤い舌を出しているあの国しかあるまい。
前半に出てくる、和洋折衷の足の悪い英国人エージェント役のチャールズ・グレイは本作の後、コネリー復活の「ダイヤモンドは永遠に」では何と、スペクターNo.1:ブロフェルド役で復活!
カーアクションもあるが、道狭すぎだろとか、突っ込み所は多い。他コメントには、トヨタ車大勝利とあるがどっこい、てんとう虫、スバル360もちゃんと映っている。日本の道は狭い笑。
タイガー田中役の丹波哲郎は堂々たる風格で、これで英語が下手だったとは信じがたい。本作の直後がドラマ「キイハンター」だったと思う。
ボンドガールNo2:浜美枝は、今見ると、何で彼女ごときが、と思うのだが、もうちょっと後だったら、由美かおるだったろうに、惜しい。ソニー製?小型車内モニターやサンヨーの段ボール(なぜかでかでかと「日本」の文字)とか、あの頃の日本の勢い、高度経済成長真っ只中を思い出せて楽しい。
しかし、映画はあくまでサンダーバード。ボンドの貢献も取って付けたようなものばかり。クライマックスの秘密基地なんて突っ込み所だらけ。
ただし、製作者は第1作ドクター・ノオを作るに当たり、フレミングのライバル、アリステア・マクリーン原作映画「ナバロンの要塞」を超えようとの目標を立てた。それが本作でも、秘密基地の場面がまるでナバロンの要塞に見えるのが何ともおかしい。そしてなぜか日本人といる時のショーン・コネリーがかっこ悪い(笑)。彼もすでに嫌々演じていたのかも知れない。
高度経済成長政策の基で東京オリンピックを控えた時期に撮影された映画だけあって、「ALWAYS・三丁目の夕日」の舞台東京がCGやセットでなく楽しめます。開業したばかりの地下鉄丸ノ内線やホテルニューオータニ、旧・蔵前国技館、東京タワー、銀座交差点、駒沢公園、代々木体育館などの昭和レトロの実写風景が随所に出てくるので「ALWAYS・三丁目の夕日」ファンの方々は必見です。しかしイアン・フレミングの原作とは月とすっぽん位の違いがあります。原作は自殺願望の強い一風変わった黄色人種として描かれていますが、映画はエレクトロニクス技術で世界を席巻し始めた技術革新の国に敬意を表して、超小型TVやロケット銃、ヘリコプターに装備した電磁石…敵・スペクターのヘリ部隊との空中戦シーンに登場するシリーズ自慢の秘密兵器、オートジャイロの“リトル・ネリー”をボンドが操縦するかと思えば、トヨタ自動車がヤマハにエンジンを特注して製造したトヨタ2000GTコンバーチブルがイギリス伝統の名車アストンマーチンに代わって東京を疾駆するのです。ボンドカーは当初は雑誌“ボーイズライフ”によると日産R380が使用されるという前宣伝でしたが、トヨタの大逆転劇が成され、クラウンやコロナなどが大挙登場するトヨタ自動車のCMのようでもあります。
奇妙奇天烈な日本が描かれているのも事実で、公安所属の特殊部隊が忍者だったり、ソープランドと間違えたのか男女混浴する(迷)シーンが登場します。特殊部隊の訓練場を姫路城に設定しているその天衣無縫なストーリーと日本文化の表現が荒唐無稽過ぎて、日本人としては疑問符だらけの作品になっていますが、クライマックスの火山内部の秘密基地に降下潜入してのバトルなどのアクションは流石の迫力でした。バックに流れるジョン・バリーの音楽も最高の出来で、フルオーケストラによる圧倒的な迫力は東洋の雰囲気を完ぺきに捉えていました。特にプロローグでの芸者ガールをシルエットにスタッフ、キャストの名前を流す場面はため息が出るほどに美しいのです。ボンド・ガールは若林映子と浜美枝という日本人離れしたBMI指数合格のナイスバディ美女ですが、スペクター側のカリン・ドールもなかなかの美女でした。当初は若林映子が海女の役で、浜美枝が公安エージェントの役の予定でしたが、日本人俳優たち全員が英語特訓のため数週間ロンドンに留学した結果、浜美枝の英語力ではセリフが難しいと判断して役を交替させたようです。なお丹波哲郎の英語力も発音が悪いと判断され、本編ではイギリス人俳優がセリフを吹替えているのです。
因みに、「ロシアより愛をこめて」のダニエラ・ビアンキや「サンダーボール作戦」のアドルフォー・チェリなどクイーンズイングリッシュに程遠い訛りの強い発音の俳優は全て、吹き替えだそうです。