幸福(しあわせ)|MOVIE WALKER PRESS
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幸福(しあわせ)

1966年6月4日公開,80分

「5時から7時までのクレオ」のアニエス・ヴァルダがシナリオを書き、台詞を添え、自ら監督した日常的なドラマの中に『幸福』の正体を鋭く追求しようとしたもの。撮影はジャン・ラビエとクロード・ボーソレイユが担当、音楽はW・A・モーツァルトのものを使っている。出演はテレビスターのジャン・クロード・ドルオーその妻クレール・ドルオーは全くの素人。「ダンケルク」のマリー・フランス・ボワイエ、ほかにサンドリーヌ・ドルオー、オリヴィエ・ドルオーなど。製作は「シェルブールの雨傘」のマグ・ボダール。六五年度ルイ・デリュック賞、ベルリン映画祭審査員特別賞を受賞している。特集『ドゥミとヴァルダ、幸福についての5つの物語』にて2017年7月22日より再上映(配給:ザジフィルムズ)。

ストーリー

※結末の記載を含むものもあります。

フランソワ(ジャンクロード・ドルオー)は妻テレーズ(クレール・ドルオー)、ジズー、ピエロら二人の子供と平凡で実直な生活を送っている。そんな彼にとって新しい事件が起ったのは、近くの町まで仕事で出かけ、電話をかけるために立ち寄ったときたった。受付の娘と二言三言言葉を交したが、彼はなぜか彼女に好意を感じた。二度目にあったとき、二人でお茶をのんだ。娘はエミリーといい、彼と同じ町に転勤が決り、部屋も見つけたことを話した。もう二人は愛を感じるようになっていた。彼女は彼に家庭があることも知っていたが二人は不自然さも罪悪感もなく、結ばれてしまった。というのも、彼は昔と全く同じように妻も子供たちも愛しており、愛する女性が二人できても、それは幸福以外のなにものでもないからだ。ある休日、例のようにフランソワ一家はピクニックにでかけた。そこで彼は妻にすべてを告白した。テレーズは少し考えてから「あなたが幸せなら私はそれでもいいと思うわ」そう答えた。彼は喜んだ。純粋によろこんだ。そして大人しい彼女がかつて見せたことのない大胆さで夫を求めた。快い疲労に眠った夫が子供たちの声で目を覚ましたとき妻の姿はなかった。池に溺死体となった妻を発見して、彼は悲しんだ。まわりの人々は不幸な事故で愛妻を失なった男として同情を寄せ、とりわけエミリーが心からテレーズの死を悲しんでくれた。日がたつにつれ、彼は昔どおりの働き者にもどった。エミリーが子供たちの面倒をみてくれ、いつの間にかそれが習慣になった。家事をする女性がエミリーにかわったというだけで、きわめて平穏な日日を送るようになっていた。

作品データ

原題
Le Bonheur
製作年
1964年
製作国
フランス
配給
日本ヘラルド映画
上映時間
80分

[c]キネマ旬報社

映画レビュー

3.6
  • 晴耕雨読

    4
    2009/5/25

     男にはこの種の浮気心は耐えずあります。特定の愛する女性がいながら、もう一方で、別の女性へ憧れる。事情さえ許せば、そのまま別の女性へのめり込むこともあります。誠に節操も無く飛び歩くのです。しかるべき経済力と自由度とチャンスがあれば、男は浮気をするのです。勿論、全ての男がそうである訳ではなく、ごく稀に存在する愛妻家か、女性に迫る勇気を持ち合わせていない男は浮気をしないでしょう。

     映画「幸福」は女性監督らしい視点から、男の性と女の性の違いを描いています。ときおり見せる静止物の画像が印象的ですが、平凡な生活が「幸福」な筈なのに男は節操もなく浮気を繰り返す不条理。家族で近くの自然公園に出かけるピクニックは画家ルノワールへのオマージュだろうか、映画全篇に流れるモーツァルトの旋律が美しいが、ラストシーンはあまりにも悲しい。高校生時代のクラス・メイトだったH・Wさんがこの映画を絶賛していたことを思い出した。

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  • かなり悪いオヤジ

    3
    2008/7/3

    南仏の陽光を浴びながら、日曜の午後草の上でピクニックを楽しむ家族。お金はないけど幸福そうなフランソワ一家(主人公を除いてはすべて素人の実際の家族らしい)を映すアニエス・ヴァルダの映像はきわめて印象派的である。フランソワが働く木工所の雰囲気も和気藹々としていて、料理自慢で働き者の奥さんテレーズにも何の不満もない、満ち足りた理想の結婚生活を満喫する男の姿が描かれる。

    これだけでは当然映画になるわけがなく、あんな幸せな家族がありながら郵便局で働くエミリーと浮気をするフランソワ。しかし、ヴァルダはこの浮気を否定的に描こうとはしない。それどころか、「幸福な庭にもう1本愛すべき木が生えていることに気がついた。お前も祝福してほしい」などという戯け言をフランソワに語らせる。しかも、どう考えても男の身勝手としか思えない不実な提案を従順な妻テレーズに受け入れさせるという、ありえない方向にお話は展開していくのだ。

    テレーズに手痛いしっぺ返しをされたフランソワは、まるで庭の木を植え替えるように、エミリーという代役を立ててあくまでも<幸福な一家>を強引に存続させようとする。男の一人よがりな<幸福>に付き合せられる従順な女性たち。印象派的映像美とモーツァルトの調べにひそませたアイロニーには、やはり女流監督が撮った作品だなぁと思わせるエグみを感じる1本だ。

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