野いちご|MOVIE WALKER PRESS
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野いちご

1962年11月1日公開,91分
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「処女の泉」のイングマール・ベルイマンが自らの脚本を演出した、老医師の夢と現実を一種の回想形式で描く作品。撮影のグンナール・フィッシャー、音楽のエリク・ノルドグレンは「夏の夜は三たび微笑む」ほかベルイマンに協力した人たちである。出演者は今はなきサント時代の監督ヴィクトル・シェーストレム、「女はそれを待っている」の新星ビビ・アンデショーンが二役を演じているほか、舞台出身でベルイマン監督に見出され、後ハリウッドで「黙示録の四騎士」に出演したイングリッド・チューリンなど。五八年ベルリン映画祭グランプリ、五九年アルゼンチンのマル・デル・プラタ映画祭グランプリ、ベニス映画祭での国際批評家協会賞、イギリス映画批評家大賞、米・ナショナル・ボード・オブ・レビュウ最優秀外国映画賞を受賞している。A・T・G第七回上映作品。

ストーリー

※結末の記載を含むものもあります。

私(ヴィクトル・シェーストレム)は七十六歳の医師、他人との交渉を好まず、もっぱら書斎にひきこもっている。六月一日、私を襲った数々の出来事と夢と思索とは、自を裏切ってきた惨めな人生を思い知らせるものであった。その日、私は五十年にわたる医学への献身によって、名誉博士の称号をうける式典に出席することになっていた。息子エヴァルドの妻、マリアンヌ(イングリッド・チューリン)が同乗して車はルンドへ向う。思いついて青年時代を過した邸に立ち寄った。草むらの野いちごは、たちまちありし日の情景をよみがえらせた。--野いちごを摘む可憐なサーラ(ビビ・アンデショーン)は私のフィアンセだった。だが、大胆な私の弟がサーラを奪った。傷ついた私の心は未だに癒えない。ここから三人の無銭旅行者を乗せた。若い彼等の溢れんばかりの天衣無縫さに接して、私はいまさらのように無為に過ごした年月が悔まれた。曲り角で、すれ違う車とあやうく衝突しかけて、相手の車は転覆した。乗っていた二人を同乗させたが、彼らはみじめな夫婦だった。あたり構わず口論し、互にさげすみ、しまいには叩き合った。マリアンヌは二人を降ろした。廻り道をして、私は九十六歳の老母を訪ねた。彼女は他人にも自分にも厳しく、親族は誰も寄りつこうとしない。死さえも彼女をさけているようだ。車中、またしても私はまどろんだ。暗い森の中に連れて行かれた私は、妻カリンと愛人の密会を見た。それは私がかつて目撃した光景そのままであった。めざめた私は、妻の告白をきいて以来死を生きていることに気付いた。マリアンヌは、エヴァルトも死を望んでいるのだと話した。車はルンドに着き、ファンファーレと鐘の音に包まれて式典は荘重に行われた。エヴァルトの家にくつろいだ私は、いつになく暖い感情にひたっていた。ベッドに横たわるとまたしても夢の世界に入っていた。--野いちごの森からサーラが現れて私を入江に連れて行った。父は静かに釣糸をたれ、傍では母が本を開いていた。彼の心境をそのままにすべては安らかであった。

作品データ

原題
Smultronstället
製作年
1957年
製作国
スウェーデン
配給
東和
上映時間
91分

[c]キネマ旬報社

映画レビュー

4.0
  • たっかん

    5
    2015/9/23

    この映画、学生時代(1980年前後)にNHK教育テレビ『世界名画劇場』で放送された時に観ようとしたが、途中で眠ってしまった。(当時はビデオも無かったので、生放送で眠ったらアウト)

    退屈な映画という印象だったのだが、近時、イングマル・ベルイマン監督の他作品を観て「素晴らしい!」と思うことばかりなので、改めて観たところ、これは「素晴らしい映画!」であった。
    (学生時代に眠ってしまったのは不覚だった…)

    物語は、医師イーサク・ボルイ(ヴィクトル・シェストレム)が50年に亘る貢献により名誉博士号を与えられることになり、息子の妻マリアンヌ(イングリッド・チューリン)と二人で車に乗って、授賞式の行われるルンド市へ向かう。

    この車の道中に入る前、イーサク老人の「奇妙な夢」シーンがあり、「人通り無い町で、時計の針なし、馬車が落としていった棺桶から手が伸びて…」というインパクトある映像美。

    イーサクとマリアンヌは、途中で車から降りて、イーサクが昔遊んだ家のあたりで「昔の風景」を見る。
    それは、当時イーサクと婚約していたサーラ(ビビ・アンデルソン)が浮気者の従妹とキスして…という場面。結局、サーラはその男と結婚する。

    さらに車は進み、昔の婚約者と同名のサーラという女性(ビビの二役)と男二人を同乗させて、……といった感じで、車は前に進むのだが、イーサク老人の思考は過去に戻る想いばかり、というあたりの対比が見事である。

    映像的にも「過去の婚約者サーラが老人イーサクを手鏡で映すシーン」など素晴らしい名場面が多数あり、物語的にも人生の意義を考えさせられる見事なテーマを根底にしており、これこそ映画芸術というべき一本である。

    イングマル・ベルイマン監督の大傑作である。

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