旅芸人の記録|MOVIE WALKER PRESS
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旅芸人の記録

1979年8月11日公開,232分
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1939年から1952年までの14年間のギリシャの圧制、占領、反乱の歴史を背景に、全土を巡業する、ある旅芸人一座の波乱に満ちた生きざまを描く。製作はヨルゴス・パパリオス、監督・脚本はテオ・アンゲロプロス、撮影はヨルゴス・アルヴァニティス、音楽はルキアノス・キライドニス、編集はタキス・ダヴロプロスとヨルゴス・トリアンダフィルー、美術はヨルゴス・パッツァスが各々担当。出演はエヴァ・コタマニドゥ、ペトロス・ザルカディス、ストラトス・パキス、アリキ・ヨルグリ、マリア・ヴァシリウ、・ヨルゴス・クティリス、キリアコス・カトリヴァノス、グリゴリス・エヴァンゲラトス、アレコス・ブビス、ニナ・パパザフィロプル、ヤニス・フィリオス、ヴァンゲリス・カザンなど。

ストーリー

※結末の記載を含むものもあります。

1952年の秋、ギリシャ南部のペロポネソス半島の北端の町エギオンに、疲れはてた12名前後の旅芸人一座がおりたった。町は大統領選挙を数日後にひかえており、選挙カーが慌ただしく通りすぎる。“パパゴス元帥に投票せよ!”。同じエギオンの町、1939年の晩秋、11人の旅芸人一座。座長のアガメムノン(ストラトス・パキス)、母クリュタイムネストラ(アリキ・ヨルグリ)、長女エレクトラ(エヴァ・コタマニドゥ)、次女のクリュソテミ(マリア・ヴァシリウ)とその幼い子供の5人の一家に、先頭をゆくピュラデス(キリアコス・カトリヴァノス)、詩人と呼ばれる青年(グリゴリス・エヴァンゲラトス)、老男優(アレコス・ブビス)、アコーデオン奏きの老人(ヤニス・フィリオス)、アイギストス(ヴァンゲリス・カザン)らだ。一行のそばを通りすぎていく男が明日の午後、ドイツ第3帝国情報相ゲッベルス閣下が、オリンポス見物の途次、エギオンを通過すると告げた。公演場所の講堂で憩う一座。表の広場では極右ファランギの青年兵士たちが“父よ、世界はなぜかくも美しい”を歌い、ピュラデスは“おまえはいつか悔いて戻ってくる”を歌う。一座の出しものは「ロミオとジュリエット」風の恋愛を描く「羊飼いの少女ゴルフォ」。エレクトラがゴルフォ役を母から受けつぎ、弟オレステス(ペトロス・ザルカディス)が恋人タソス役を父から受けついだが、兵役にとられた彼に代ってピュラデスがタソス役やることになった。その夜、エレクトラは、母クリュタイムネストラとアイギストスの密通を目撃してうちひしがれる。夜明け、思いがけずに特別休暇をとって帰ってきたオレステスと舞台の役名で挨拶を交わす姉弟。しかし、舞台の幕があくと、秘密警察の男たちが来て、ピュラデスが捕えられたため、公演は中断した。 1940年10月28日、一座が降りたった駅では、町の人々が行進して歌を歌い、民家にはギリシャ国旗が翻っていた。が、まもなく空襲がはじまり、アガメムノンは補充兵として去り、母の室にはアイギストスが入ってきた。41年の正月頃、街なかでファランギの下士官に暴行されそうになったエレクトラが危いところを逃げ去った。その年の4月、ギリシャ全土が独軍に占領された。42年の初冬、英国が送りこんだ救援軍兵士とギリシャのゲリラ兵を追及する占領独軍が旅芸人たちの宿舎を襲い、アイギストスの密告で、オレステスがゲリラに加わっている事がわかり、代りにアガメムノンが銃殺された。座長になったアイギストスに皆は黙ってついていくが老男優だけが出ていった。1943年頃、独軍占領がながびく中、ある日エレクトラは、脱獄に成功してゲリラになっていたピュラデスに再会。彼はオレステスと合流するところだった。一座がバスで旅を続けていた時、他の市民と一緒に独軍に捕まり全員が射殺されそうになる。が、その時襲撃してきたゲリラ軍によって助かった。こうして、独軍の勢力は衰退し、 44年の秋独軍は徹退した。国民統一政府の成立を祝して、人民歌で行進する国民解放戦線の長い行進が続く。45年の正月、一座が山岳地帯での巡業に入ったある日、エレクトラは、オレステス、ピュラデス、詩人と再会し劇場に戻った。オレステスは、舞台上で母とアイギストスを射殺した。その夜、母のレコードを聞いて思いにふけるエレクトラが、仮面をつけた秘密警察の男たちに強姦された。45年12月に結ばれたヴァルキザ協定により、ゲリラは新政府に協力することを余儀なくされ、山にこもり続けるゲリラは重犯罪人とみなされた。49年の春、英軍のジープが、ゲリラの首をさらして村をゆく。そのあとにつづく捕えられた最後のゲリラたちの中にオレステスがいる。 50年、反共宣誓書にサインして釈放されたピュラデスに再会するエレクトラ。その年の暮に再会した詩人は、なかば廃人となっていた。51年、エレクトラは、ようやくオレステスと面会するが、それはすでに処刑された彼の死体との面会だった。オレステスの葬式で、遺骸が土にうずめられようとする時、思わずエレクトラが拍手を送った。そして、それに合わせて拍手に送る一座の人々。詩人は無言で空をあおいだ。52年の晩秋の夕べ。その夜は、クリュソテミの息子(ヨルゴス・クティリス)の初舞台で、彼はタソス役を演じる。メーキャップをなおしてやるエレクトラは思わず咳いた。“オレステス!”。そして「羊飼いの少女ゴルフォ」の幕がやがてあいた。

作品データ

原題
O Thiassos
製作年
1975年
製作国
ギリシャ
配給
フランス映画社
上映時間
232分

[c]キネマ旬報社

映画レビュー

4.4
  • たっかん

    4
    2016/2/28

    この映画が公開された1979年、高校生だった私は「なんか面白くなさそうだなぁ」とスルーして長年が経過してしまった。。。

    ようやく観たテオ・アンゲロプロス監督作品。
    レンタルDVDは2枚組、3時間52分の壮大なドラマであった。
    1939年~1952年のギリシャを舞台に、随分と政治的背景を描きながら、タイトルの旅芸人を追うカメラ。

    こちらは第二次世界大戦前後のギリシャの歴史などよく知らなかったのだが、「パパゴス元帥へ投票せよ。1952年x月x日が投票日」なる選挙カーが通り過ぎたかと思えば、(1942年)などのようにカッコ書きで年号を示してくれる丁寧な字幕。

    この時代の遡及のしかたが凄くて、1952年の選挙カーが立ち去ってしまったかと思えば、カメラが右から左に振ると時代が遡るといった凄いワンショットである。驚きだ。

    ワンショット、ワンショットが長く、スローモーション映像か絵画を見ているような感覚になるが、美しいシーンばかり。

    しばらくしたら、また観たい映画である。

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  • 晴耕雨読

    5
    2009/5/23

     39年から52年までの時間の流れを、ある旅芸人一家の歴史に絡めて叙事詩的に織り成した名作です。映画ではナチスドイツ軍の侵攻とそれに対するパルチザンの抵抗運動、更に戦後の内戦と、歴史に翻弄される人間たちの悲しみが表現されています。

     パルチザンに参加するのが旅芸人の座長の息子オレステス。これに座長に対する妻の裏切りと娘エレクトラによる母親への復讐という情念のドラマが重層的に展開されるのです。人物は全員がギリシャ悲劇のように行動し、そこに抗いがたい運命の悲劇が展開されます。ギリシャが生んだ世界的名匠テオ・アンゲロプロス監督特有のゆったりとしたパンニングと風景を包括するロングショットに、詩情豊かな言葉が葛折りとなって、見事な現代版ギリシャ悲劇が誕生しました。

     余談ですが、ギリシャの場合、解放後も共産主義の解放軍や王党派、それにイギリス軍が入り乱れての流血が長く続きました。これについては名匠ピーター・イェーツ監督の「哀愁のエレーニ」に、その悲劇が描かれています。

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