ショート・カッツ|MOVIE WALKER PRESS
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ショート・カッツ

1994年10月8日公開,187分
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アメリカのごく普通の住宅地を舞台に、些細なことから生じる人生の出会いと別れ、葛藤と和解、愛と裏切り、生と死などを、さまざまなエピソードで綴った一編。死の暗示を根底に置き、さながら、アメリカの市井に生きる人々の黙示録というべき人間絵巻となっている。22人の主要登場人物からなる9組の家族や友人たちの日常が、無数のエピソードで縦横に語られ、時にすれ違い、時に重なり合いながら、クライマックスに向かって進む複雑な構成の妙が圧巻。″アメリカのチェーホフ″と呼ばれ、アメリカで最も愛された作家のひとり、レイモンド・カーヴァーの9つの短編と一編の詩(村上春樹訳による中央公論社のカーヴァー全集に所収)を、「ザ・プレイヤー」でハリウッドに復帰した異才ロバート・アルトマンが監督。ほかのカーヴァー作品の断片や原作にない独自のエピソードも盛り込まれた脚本は、アルトマンと『クインテット』(V)などでも組んだフランク・バーハイトの共同。製作は73年の「ボウイ&キーチ」以来、アルトマンのパートナーを務めるケイリー・ブロコウ。撮影は「KAFKA 迷宮の悪夢」のウォルト・ロイド、美術は監督の実子スティーブン・アルトマンが担当。音楽は大物プロデューサーのハル・ウィルナーの指揮の下、「蜘蛛女」のマーク・アイシャムがオリジナル・スコアを書き、出演もしているジャズシンガーのアニー・ロスが、エルヴィス・コステロ、U2など意表を突く選曲の挿入歌を歌う。出演は「ザ・プレイヤー」のアンディ・マクドウェル、ティム・ロビンス、「ストリーマーズ 若き兵士たちの物語」のマシュー・モディン、「バッド・ガールズ」のマデリーン・ストウらオールスター・キャスト。

ストーリー

※結末の記載を含むものもあります。

〈プロローグ〉ロサンゼルスのとある住宅街。突如発生した害虫を駆除するべく、ヘリコプターの編隊が殺虫剤を散布する。〈EP1〉TVキャスターのハワード・フィニガン(ブルース・デイヴィソン)と妻アン(アンディ・マクドウェル)には、明日9歳になる息子のケイシーがいる。アンは無愛想な職人気質のケーキ屋アンディ(ライル・ラヴェット)にバースデイ・ケーキを注文する。だが、そのケイシーが車にはねられ、昏睡状態となる。さらに悪質ないたずら電話が頻繁にかかってくる。ケイシーは二度と目を覚まさなかった。電話の正体はアンディだった。注文したにもかかわらずとりに来なかったことを恨んでのことだった。事情を知った彼は夫婦に謝罪する。〈EP2〉ポール・フィニガン(ジャック・レモン)は、孫ケイシーの見舞いに病院を訪れる。息子ハワードの前に姿を現すのも30年ぶりの彼は、彼に真実を知ってもらいたいと妻との過去を語り、ケイシーの不幸が起こると、そっとその場を立ち去った。〈EP3〉ファミリーレストランで働くドリーン(リリー・トムリン)はアル中の夫アール(トム・ウェイツ)に、今朝子供をはねたと告白する。きっと無事だと思い込んだ2人はケイシーが死んだ事実も知らずに馬鹿騒ぎに興じる。〈EP4〉ジャズシンガーのテス・トレイナー(アニー・ロス)とチェリストの娘ゾエ(ロリ・シンガー)は、自分を音楽でしか表現できず、お互いをうまく理解しあえない。隣人のフィニガン家のケイシーが亡くなったことを知り、衝撃を受けたゾエはクラブでリハーサル中の母に知らせようとする。だが、何の関心も示さない母に幻滅したゾエは自殺する。〈EP5〉愛人ベティ(フランセス・マクドーマンド)の家から朝帰りの警官ジーン(ティム・ロビンス)は、妻のシェリー(マデリーン・ストウ)に責め立てられる。彼は八つ当たりに飼い犬を捨てる。しかし妻子のご機嫌を伺うため、犬を探しにバイクを走らせる。〈EP6〉高級住宅街に住む画家のマリアン(ジュリアン・ムーア)と医師ラルフのワイマン夫妻は、はたからは理想のカップルに見えるが、夫婦との間には深い溝があった。〈EP7〉殺虫剤散布を終えたヘリコプターの操縦士ストーミー・ウェザー(ピーター・ギャラガー)は、別れた妻ベティに誕生日を祝う電話をかけるがとりつく島もない。ベティに男がいることを知ったストーミーは、留守中の彼女の家に忍び込み、電動ノコギリで部屋の中をメチャクチャに切り刻む。〈EP8〉スチュアート(フレッド・ウォード)は、釣り仲間ゴードン(バック・ヘンリー)、ヴァーンと川へ鱒釣りに出掛ける。目的地にたどり着いた彼らは、女性の全裸死体が川に浮かんでいるのを発見する。あまりに山奥なので警察にも連絡しようがなく、彼らは死体をロープでくくりつけたまま、釣り三昧の3日間を過ごす。帰る日にやっと通報した彼らは、翌朝の新聞紙面を飾った。〈EP9〉ピエロの出張サービスをしているクレア。仕事に疲れて家に帰ると、夫のスチュアートが死体の一件を話す。彼女は釣りに興じていた彼を激しく非難し、翌日、人知れずその女性の葬儀に出席した。〈EP10〉メイクアップ・アーティストのビル(ロバート・ダウニー・ジュニア)と妻のハニーは、テスの歌うクラブで知り合った、向かいに住むリッチな黒人夫婦が1か月アパートを留守にする間、管理を任される。ハニーは真面目に勤めを果たそうとするが、いい加減なビルは友人のジェリー(クリストファー・ペン)とその妻ルイス(ジェニファー・ジェイソン・リー)を呼び、どんちゃん騒ぎに明け暮れる。〈EP11〉プール掃除の職につくジェリーは妻のルイスが育児をしながらテレフォンセックスのバイトに精を出している姿に耐えられず、欲求不満が募るばかり。そんなある日、2人はブッシュ夫婦と子供たちを連れて郊外にピクニックに出掛ける。2人組の女の子に目をつけたビルとジェリーはナンパに成功。彼らは二手に別れるが、ジェリーの目つきは異様に変わっており、石塊を掴んだ彼は、女性の頭に降り下ろした。〈エピローグ〉ピクニック場の森から鳥が一斉に飛び立った次の瞬間、ロサンゼルスを大きな地震が襲った。人々はそれぞれの生活の場で異変に遭遇する。混乱は収まり、ピクニック場のあの女性とジェリーを除くと奇蹟的に死者はなかった。クラブではアニーの歌声が流れ、人々はまた普段通りの生活に戻った。

キャスト

アンディ・マクドウェル

Ann Finnigan

ブルース・デイヴィソン

Howard Finnigan

ジャック・レモン

Paul Finnigan

ゼイン・キャシディ

Casey Finnigan

ジュリアン・ムーア

Marian Wyman

マシュー・モディン

Dr. Ralph Wyman

アン・アーチャー

Claire Kane

フレッド・ウォード

Stuart Kane

ジェニファー・ジェイソン・リー

Lois Kaiser

クリス・ペン

Jerry Kaiser

ジョゼフ・P・ホプキンス

Joe Kaiser

ジョゼット・マカッリオ

Josette Kaiser

リリ・テイラー

Honey Bush

ロバート・ダウニー・Jr.

Bill Bush

マデリーン・ストウ

Sherri Shepard

ティム・ロビンス

Gene Shepard

キャシー・フリエル

Sandy Shepard

ダスティン・フリエル

Will Shepard

オースティン・フリエル

Austin Shepard

リリー・トムリン

Doreen Piggot

トム・ウェイツ

Earl Piggot

フランシス・マクドーマンド

Betty Weathers

ピーター・ギャラガー

Stormy Weathers

ジャレット・レノン

Chad Weathers

アニー・ロス

Tess Trainer

ロリ・シンガー

Zoe Trainer

ライル・ラヴェット

Andy Bitkower

バック・ヘンリー

Gordon Johnson

ヒューイ・ルイス

Vern Miller

ダニー・ダースト

Aubrey Bell

マージェリー・ボンド

Dora Willis

ロバート・ドキ

Knute Willis

ダーネル・ウィリアムズ

Joe Robbins

マイケル・ビーチ

Jim Stone

アンディ・チャップマン

Harriet Stone

デボラ・ファルコナー

Brbara

スージー・キューザック

Nancy

チャールズ・ロケット

Wally Llttleton

ジェーン・アルデン

Mrs. Schwartmeier

クリスチャン・アルトマン

Jimmy Miller

ウィリアム・H・D・マーレット

Jimmy's Friend

ダーク・ブロッカー

Dinner Customer

スザンヌ・カルヴァート

Tarmac Secretary

ナタリー・ストロング

Mouner

ジェイ・デラ

Bartender

ジェルス・ペールソン

Club Owner

デレク・ウェブスター

Joe Robins' Pal

アレックス・トレベク

Alex Trebek

ジェリー・ダンフィ

Jerry Dunphy

アニー・ロスとロウ・ノート・クインテット

Themselves

ザ・トラウト・クインテット

Themselves

作品データ

原題
Short Cuts
製作年
1993年
製作国
アメリカ
配給
日本ヘラルド
上映時間
187分

[c]キネマ旬報社

映画レビュー

4.1
  • ミチさん

    4
    2011/9/3

    と言うんでしょうね。
    この22人の登場人物の内、知っていたのは、
    ジャック・レモン、ジュリアン・ムーア、ティム・ロビンス、フランシス・マクドーマンドくらいのものでしたが・・・。
    話がこま切れになっているので、長い感じはしませんでした。テーマと言えるのは「死」ですね。それも荘厳、おごそかな「死」ではなく、日常生活に突然現れる、説明不能な、不条理な「死」です。
    ただ、これに対し人々は絶望に打ちひしがれている訳ではなく、「死」を受け止め、その中で精一杯生きている、という印象です。
    「死」をエンターテインメントにして良いのかどうかはともかく、誰でもイヤでも直面する問題ですからね。

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  • 晴耕雨読

    4
    2009/5/24

     登場人物が多数登場する上に上映時間も3時間を超える長尺作品ですが、映画の足取りは、水面を撥ねる小石のように軽やかです。思うに任せないロサンゼルスの日常を鮮やかに切り取って見せます。ハリウッド的な大作とは一線を画して、美しい風景も大袈裟な音楽もありません。ロバート・アルトマン監督は常に、息を呑むスペクタクルより即興的に、結論より途中経過にこだわってきました。

     ロサンゼルスで生活する悩める人々の成果を軽々と織り込めるあたりは、ベテラン監督ならではです。仕上がりはさり気ないのですが、その陰にはアルトマン監督の鋭い感性と人間に対する好奇心が貫かれています。例によってストーリーは決して心温まるものではありません。波長が合わず、心を通わせられない男と女が主人公です。赤ん坊の世話をしながらテレフォンセックスの内職をする妻と、その喘ぎ声に怒りを堪える夫。浮気性の夫と別れられず笑い飛ばす女………。

     しかし画面から目をそらすことは出来ません。目指すべき理想もルールもありません。混迷するアメリカ合衆国中産階級の現状をこれほど鮮やかに捉えた監督はいません。苦い現実を見せつけられた後でも、観客の胸は深い満足感で満たされるのです。愚かでほろ苦い人間模様を描いた傑作です。

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